前回の続きですが、香港からの客人は、ともかく寄付きに入られました。

 お詰兼案内役のTさんのご指導で、汲み出しの桜湯も召し上がり、いろいろ茶事の流れの説明を受けたようです。寄付きには、懐紙、扇子、菓子切りなど、二人分を用意しておき、白いソックスを持参するように、あらかじめ息子から告げさせておいたので、これで十分と思っていたら、後から聞いたのですが、二人ともハンカチを持っておらず、蹲を使うのに必要なので、用意の良いTさんが、予備のハンカチをお貸しになったとか。型の如く迎え付けをし、席入り、床、点前座の拝見も、Tさんのご指導よろしく、なんとかこなしたようです。ご挨拶にまかり出ると、正客には娘さんが、ズボン姿で正座、次客の母親は足が悪いということで、椅子に。すっかり緊張気味の正客に、まず「膝をお崩しになってお楽に」と勧めると「頑張れるだけ頑張ります」とのことですが、二分後には、やはり膝を崩され、香港式に胡座をかかれました。茶室の説明をし、床の間の軸は、禅に関係のある文字を掛けることが多いと説明。禅は知っているらしく、母親は坐禅を組む格好をして頷いています。「喫茶去」の意味もすぐ読めて理解した様子。そこは同文同字の国のおかげでしょう。娘さんが母親に一々通訳するので、少しは時間がかかりますが、案外スムースに進行。妻が出て挨拶して、炭を入れます。まだちょっと緊張気味ながら、炉と炭は珍しそう。湿し灰を何故撒くかという説明も、すぐ理解出来たようです。都鳥香合も、果たして浅草観光には行ってきたということで「あの隅田川ですか」と理解した様子。青鸞の羽根を珍しがらないのは、仕方ないでしょう。終わって一献。

 八寸は銀杏と帆立貝、吸物は鯛、紅葉麩、隠元など。日本酒はあまり呑まないということなので、飲みやすい上善如水を用意。よくしたもので、飲食の間に、お詰さんの上手な誘導もあって、気分が大分ほぐれたようです。 

 お菓子は、虎屋の「錦秋」。中立してもらい、銅鑼で迎付け。後座の床は、北村幽庵の作の竹花入、銘時雨。小菊と榛を入れました。釜は、大西浄雪の小阿弥陀堂。

 道具の説明をすると、釜はとても百年以上前のものには見えないと驚き、逆に花入の古さには素材の点も含め、感心していた様子です。点前座は、やはり中国系のものが良いかと、茶入は無銘ですが唐物文琳と水指は新渡染付の四愛図を用意。

 水指の図柄に出てくる、陶淵明や李白の名は知っていたようです。長くなりますので、続きは次回に。

  萍亭主