前回の続きですが、Koさんの茶事も、無事に後座となりました。

 後座の床の花は、丁度咲いた三寸菖蒲。残炉の茶事ではありますが、初夏への橋渡しという気分。

 花入は、席主が茶名を取られた時、お祝いに、今日のお正客から贈られた品だそうで、まさに使い所です。平戸焼の十三代横石嘉助作の青磁中蕪形。濃茶、後炭、薄茶、最後の送り礼と、滞りなく進行したようで、あわやという事態もなくはなかったそうですが、妻の話では、未然に食い止めて、全て無事だったとか。暑さが増して来たので、寄付きに戻られたお客様に、冷水を一杯お振舞いして、無事お開き。その後、私も席に参上して、、お道具を拝見して、薄茶を頂戴。

 茶入は、赤膚焼で、肩に奈良絵が小さく描かれている品。奈良から遠来のお次客へのご馳走ぶりで、大塩恵旦の作。心遣いに、お次客も喜ばれたことでしょう。茶杓を、ご自分の干支に因んで、三節しの「三猿」という銘のものを使われましたが、茶事の趣向から行くと、これは何か、季節の銘の物を使われた方がよかったかと思います。

 茶碗は、席主の家に伝来の赤楽茶碗。十四代覚入の作で、淡々斎が「聴松」の銘をつけ、席主が十五代直入の極めを貰っている、由緒正しいもの。

 替茶碗は、妻が、茶名取得のお祝いに席主に贈った絵唐津で、井上東也の作。

 水指は萩の坂倉新兵衛作で、端正な形で、深い姥口が面白い。

 頂いた干菓子は、桃林堂の花衣と、阿波の本場の和三盆の水。

 薄器は山吹蒔絵の面取茶器、立ち上がりに帰雁の蒔絵。昭和期の三田村自芳の作。薄茶用の茶杓に輪島塗で裏に柳の絵のあるものを使われ、両方とも季節にピッタリ。

 薄茶碗は、主茶碗が、通次阿山作の銘「緑樹」、替茶碗が、席主の故郷に近い出石焼の白磁。出石焼の茶の湯道具はそもそも少なく、あっても、水指、香合などで、茶碗は珍しい。

いずれも主題に沿った、力を入れた道具組で、ご苦心の程がよくわかります。元気なお席主は、終わってもお疲れの色も見せませんが、老齢の私は、何もしていないのに、二回連続の茶事に立ち会っただけで、バテ気味。ともかく無事終了はめでたいことです。

   萍亭主