先週は、四日間のうちに二回お茶事があるという巡り合わせの、なんとも気忙しい日々でした。

 と言っても、別に私たちが催す茶事ではなく、若い人たちが我が家の茶室を使って茶事をなさるだけで、私たちはサポート役ですから、それほど働くわけではないのですけれど、意外と、自分が動くのでなく他人がやるのを見ている方が気疲れがするものです。二回とも、前日は雨で、たっぷり自然の打ち水があった後、当日は晴れ上がるという運の良さで、思ったほどは汗だくの暑さにもならず、炉の名残として、いい感じでした。一回目の亭主は、初めて茶事を催すNさん。去年、半白または知命ともいう、要するに五十歳の節目を迎えられ、妻がそれを祝って飯後の茶事にお招きして、お祝いに拙作の茶杓を差し上げたりしたのですが、それを使って茶事をという有難いお考え。人生五十年という昔の時代ではなく、長寿社会の現代、ことに茶の湯の世界では、まだ若手という認識で、初めて茶事をするというのも、そう珍しい現象ではないでしょう。Nさんは、今まで、半東をやった経験もあり、客では何回も茶事に連なっているのですが、亭主ともなれば、別の緊張感あり、準備段階で、あれこれ悩み、練習もされたようです。さて、当日、初座の床には、茶杓を一本あれば茶は楽しめるという心意気で、「漁夫生涯竹一竿」を掛けられましたが、ここで奇跡が。というのは、後座の床の花は、Nさんの家の庭か、我が家の庭に朝咲いた花を適宜使おうというつもりで、ただ、気温が暖か過ぎて、どの花が丁度使えるやら、わからない状態でした。ところが、当日朝、庭の隅に、なんと浦島草が一本、見事な釣り糸を垂れて咲いていたのです。早速、予定していた花入の代わりに、舟の花入を持ち出して生けました。本来は吊りの花入ですが、茶室が吊り釘がないので、向こう釘に掛けたのですが、大丈夫おさまります。そもそも、この浦島草、昔、出入りの植木屋さんから貰って、植えていたのですが、やっと、年に一株咲くくか咲かないかくらい、それが、この日の朝、偶然咲いた。初座と後座の床の趣向が、こんなにピッタリ一致する茶事は、なかなか記憶にありません。

 上は準備中の花入

 まさに一期一会の出会いで、ご亭主のNさんは強運の持ち主だと、妻は盛んに感心していましたが、お正客はじめ連客の皆さんからも、大きな感嘆の声が聞こえました。

   萍亭主