前回の続きですが、Hさんの古希を祝う茶事は、無事、終了しましたが、最後に妻から、Hさんにプレゼント。

 と言っても、古希のお祝い品というわけでもありません。何でもお持ちのHさんに、これという祝い品も思い当たらず、茶事そのものがお祝いで、ただ、いたずら心で用意した品です。実は過日、Hさんから「蛤があるのですが、お食べになりませんか」と電話がありました。なんでも、故郷納税をされたら、その返礼品として蛤が来たが、思ったより大量に来たので食べ切れない、よろしかったらということなのです。有難く頂戴するとご返事すると、ではお届けしますということで、宅急便が来ると思っていたら、なんと、数時間後に、自家用車で、お雇い運転手さんが蛤を捧げ持って来訪。大粒の良い蛤で

味も美味しく、堪能したのですが、残った貝殻を見て、妻がいたずら心を起こしました。これで香合を作ろうというのです。ご承知のように、貝の香合は炉、風炉兼用で使える便利なもので、貝殻をそのままも使えますが、それでは面白くない。日本橋にある金沢の金箔屋の支店に行き、金箔と金粉を買い込みました。店の人に「貝のように湾曲したものに金箔を貼るのは、なかなか難しいですよ」と言われましたが、果たして悪戦苦闘。金箔の隙間を金粉で埋めたりして、いかにも素人作ですが、お笑い覚悟の品ですから、まあいいでしょう。墨で、これも下手な山家と樹木の画を描いて出来上がり。

 茶事の終わりに、ほんのお土産と差し出しました。「里ふる」と付けた銘に、Hさんも大笑い。笑いの内に、お開きとなりました。親しい仲だから出来る遊びですが、これを「茶がある」と捉えるか、「不真面目」と思うか。偉い茶人はどう評するでしょうか。

   萍亭主