先日、八回目の終活茶事を催しました。

    終活として、飯後の茶事を、気楽にして行こうと始めた茶事ですが、別に、こういうことをやっているよと宣伝したわけでもなく(ブログに書いたりしてるじゃないかと言われれば、それはそうなのですが)、こういう事をしてますから、お出かけ下さいと呼びかけるわけでもなく、思い立った時、気の向くままに「そうだ、あの人を招いてお茶をしよう」と、やってきただけですが、知人の中に多少は噂が広がって「終活という言い方は寂しくてよくない」とか「これでもう招く気はないということか」「茶の湯と縁を切るつもりか」などといろいろ言われました。ともかく、出来るうちに、長年の無沙汰を詫びる茶事とか、知人の慶事があれば祝賀茶事をするとか、きっかけさえあれば、やろうという精神に変化はありません。慶事といえば、妻が「あの人、今年でもう古希でしょう」と気がついて声を掛けたのが

古くからの長いお付き合いのHさん。いつもお若い外観のHさんが、もう古希かと吃驚したのですが、本人に確認すると、その通り。長いお付き合いなので、それでは御夫婦をお招きしてお祝いということになりました。連客はご夫妻とも親しいKさん。Kさんは、以前は我が家の至近距離に住まわれていて、それこそ大昔からのお付き合い、横浜に移住されて、コロナ前くらいから茶の湯と離れておられますが、久しうりにお目にかかれる機会ともなります。半東を皆さんと親しいTさんが引き受けて下さり、準備万端整って、当日午後一時半に席入り。寄付きは常のごとしですが、玄関にお雛様(お内裏様)を飾りました。理由は後ほど。本席の掛軸は、わかりやすく「目出度」で、お祝いの気持ちを。

 三井本家第十代当主の八郎右衛門高棟の明治45年元旦の試筆です。Hさんのご夫君にお目にかかるのは久しぶりで、久闊を叙しながら歓談。やがて炭点前に移ります。

 釜は、時節柄、透き木釜に。角谷莎村の作。炭道具は定番で以下の品。

 炭斗は唐物鎧口の写しで、池田瓢阿さん指導で妻の拙作。羽根は青鸞の雌。釻は名越浄味の虫食い。火箸は時代の桜柄。灰器は古曽部焼の数印。灰匙は六代中川浄益。

 そして香合は呉須赤玉、五代高橋道八作。実は、Kさんが今年は結婚40周年、つまりルビー婚の年になります。それを当て込んで、赤玉にした次第。妻はKさんが結婚された時のお祝いに、Kさんとお母様をお招きして茶事を行い、その時に脇床に、お雛様を飾ったそうです。そこで、前述の玄関に雛を飾ってみたという次第。私はその茶事を全く覚えておらず、もしかしたら、当時は仕事で忙しく参加していなかったのかもしれません。しかし肝心なKさんも、茶事は覚えていても、雛を飾られたかどうかは全く記憶になく、やはり茶事は、亭主の方がよく記憶しているものらしいと大笑いになりました。茶事の続きは次回に。

   萍亭主