前回の続きですが、妻が提案した終活茶会(茶事)は、飯後というのが、一つの味噌ではあるようです。
飯後、すなわち懐石がないということで、確かにそれは、この老体には、楽なことではあります。懐石は、当然、自前で作るので、献立を考え、材料の買い出し、前日からの仕込み、当日の忙しい中での調理、配膳と、大変な労力と時間が要ります。数ある懐石道具を出して、綺麗にして準備するだけでも、結構な手間です。加えて、本番で、ややこしい順序を間違えないように給仕するにも、体力気力が必要です。昔の言葉に「還暦以上はお給仕御免」というのがあって、六十歳越えたら、亭主は懐石の給仕は他人に任せても良いというのがあったそうですが、そんなことをしたら、二人でやるなんてことにはならない。懐石がないというのは、確かに労力がかなり減ります。お客様にご満足頂けるかどうかですが、長い時間、窮屈な思いをしないで、短い時間で楽しんでいただけるという利点もあるかもしれない。ともあれ、一度やる方向で、黙って内緒で検討してみようということになりました。
露地や茶室の清掃、準備がこれまた老人にはきついのですが、幸い、十月末には風炉・炉の入れ替えがある、この時は、子供達一家や、知友が来てくれて、一挙に掃除もしてくれるので、その後の日なら、そう大掛かりな掃除をしないで済む、まだ一月以上あるから、道具の準備は、ポツポツとやっていけばよい、とりあえず、十月末の日曜日に設定しようということになりました。誰を招くかということですが、主旨からいって、今までお世話になっている古い茶友とか、何か慶事がある友をお祝いするということにしたいので、古くから家に来られていて、丁度古希を迎えられたYさんをお招きしようということになりました。一番気安く遠慮もない仲なので、申し訳ないが実験台に丁度よい。お願いしたところ、快諾して下さったので、連客三人もYさんにお誘いくださるよう、勝手なお願いをしました。
そう決まると、今度は真剣に道具組みを考えねばなりません。その前に、風炉・炉入れ替えは終わっているわけですから、十月末なのに一足早く炉で茶事を行うことになる。それは構わないのですが、Yさんは古い付き合いなので、家の道具をよくご存知なので、せめてあまりお見せしなかった道具も使ってお招きするべきだろう、それには開炉より名残の方がいい。私の主張に、風炉の灰を作り直さねばならない妻は、ちょっと逡巡しましたが、結局賛同して、小間だけは炉畳に変えず、そのままにしておくということになりました。私は、何年も使わず仕舞い込んだままの鉄のやつれ風炉を出すことから仕事を始めるることになりました。続きは次回に。
萍亭主