季節は移るもので、炉開きの季節が近づいて来ました。
茶の湯に関わっていると、年二度の炉と風炉の入れ替えは、嫌でもやらないわけにも行きません。昔は季節の移り目に、むしろ新鮮さを感じて体を動かしたものですが、齢を重ねると、正直、面倒臭さが先に立ちます。いちどきに何もかもも出来ないので、まだ十月は十日ほどもあるが、とりあえず風炉関係はしまってしまい、炉は十一月の九日に開けようという段取りになりました。風炉の灰をふるい、風炉を綺麗にする仕事は、私は手を出さず、軽労働の炭道具の入れ替えを担当。風炉用の香合、炭斗、火箸、羽根、灰器、灰匙を、炉用のものに取り替えるのですが、こんな面倒なルール、誰が決めたんだろうなど、ふっと思うこともあります。毎年、二度もやることなのだから、しまう場所をきちんとして、スムーズに入れ替えれば良いものを、始末が悪くて、毎回、一つくらい、あれはどこにしまったけと、ううろうろします。今回も、どうせ稽古用なのですから、どうということもないもですが、先代の頃から使っている織部の香合が見つからず、散々探して、とんでもないところに、ひょいと置きっぱなしになっているのを発見、無駄な時間と労力を費やして嫌になります。例年、広間の障子を、7月には、簾に変え、9月中には障子に戻すのですが、今年は猛暑のせいもあって、今まで、簾を掛けっぱなしでした。この二日ほど、また気温が上がっていますが、流石に障子に戻すことに。ところが、これも毎年のことなのですが、四枚の障子を、それぞれ本来の場所に入れないと、建付が悪く、隙間が空いてしまうのです。外す時に、障子にナンバーなり目印をつけ、どこの位置とわかるようにしておけば、どうということがないのに、毎年それを忘れて片付けてしまうのですね。今年も障子に目印が付いておらず、入れてみてうまく行かず、何度も組み直しを変えてみるという労力を費やすことになりました。今度外す時こそ、目印を付けようと言いかわしながら、でも来年夏に外す時には又忘れそうです。
炉風炉入れ替えで、もっとも大仕事なのは、風炉用の丸畳を炉畳に入れ替えることです。昔は、先代の頃からの出入りの畳屋さんが、お願いするとやって来て、さっと畳を入れ替えてくれました。たまにお酒一本ぐらいのお礼で、手間にもならない端仕事(はしたしごと)を嫌な顔もせずやってくれました。まさに江戸川柳にいう「畳屋を端(はした)に使う神無月」だったのですが、その畳屋さんが引退してしまい、近所に畳屋も一軒もなくなり、よほどの場合は建築会社経由で畳屋を頼む状態になってからは、素人で畳替えをせざるを得ないまま、もう十五年以上経ちました。こればかりは、かなりな力がいるし、孫など男手が頼める日にやる以外なく、今年もその日を11月までに作らねばなりません。昔の富豪数寄者なら、畳屋ばかりではなく、庭師、数奇屋大工、道具商など、お出入りの職方がわっと集まり、あっという間に炉風炉入れ替えなど行われたでしょうし、現在も大きい茶家はそうかもしれません。我が家のような家内工業には、夢の又夢ですが、それでも、いろいろとお手伝いくださる篤志な方もおられるので、ありがたいことではありますが。
萍亭主