早いもので、今年も東京美術倶楽部で行われる、東美アートフェアが開催されました。

 最近は購買欲も購買力もなく、無駄とは思いつつ、しかし道具は見てもみたいし、招待券を頂いたこともあり、出かけてみることに。驚いたのは、平日の昼近いのに、会場は老若男女とりまぜ大勢の客で、外国人も多少は見え、コロナ前の状況にだいぶ戻った感じ。各店の設えも気合が入っていて、いろいろ趣向を凝らし、ただ雑然と品を並べているような店は、あまりありません。名品揃いと見受けましたが、お値段の方も、どうもコロナ以前の高価格に戻っているような気がしました。もっとも、コロナの渦中でも超一級の品は値崩れしなかったと仄聞しますから、骨董業界というのは、そんなものかもしれません。取引成立して、お買い上げという場面もいくつか目撃したので、そこそこの景気かと見たのですが、大名品クラスは売れ行きはどんなもんなのでしょうか。私は、絵画、鑑賞陶器、刀剣などは素通りして、茶道具関係だけ見て歩きましたが、目も衰えているので、見逃しも多いことでしょう。茶道具ではありませんが、印籠を沢山集めた素晴らしいセットや、千五百万円だという李朝の白磁壺が目を引きました。茶道具では、墨跡も多くありましたが、手が出る範囲のものはなし。好みの問題ですが、印象に残ったのは、久須美疎庵の竹花入、満田道志の石州好み松毬棗、小代焼の菱形水指というようなところ。素晴らしい斗々屋茶碗に出会って、その釉薬の風合い、色合いの素晴らしいこと、展覧会で見たガラス越しの名品を凌ぐような、これこそ茶人が惚れ込む斗々屋の美と感嘆したのですが、三百五十万じゃ、全く縁がありません。近代数寄者のものでは、知り合いの道具屋さんが、「馬越化生の茶碗が出てるから、見てみませんか」と、わざわざ他の店に案内してくれたのですが、茶碗の胴に「人間万事皆健康」という、化生が愛用した文句が書き付けてあるもの、清水六兵衛窯で焼かれたもので、類品が黒い字で書かれているのに対して、これは赤い字なのが珍しい。しかし、中澤という人への為書きもあって、その辺がどうもというところ。別の店で、益田鈍翁の「佛心鬼」という、素晴らしい筆跡の細長い一行があり、共箱で「鈍翁山人」の署名があり、こういう署名は、店主も初めて見る珍しいものだということ。出来栄えには惚れ込みましたが、実際に使うには難しそうな字句で、六十万円はちと高いような気も。もっとも、他店で、鈍翁の茶杓が百五十万で出ていましたから、鈍翁の人気は、下がっていないのでしょうか。

 道具を見るのは、やはり面白いものではありますが、疲れもします。疲れて会場を後にする私の手には、今回も何もぶら下げられてはいません。

   萍亭主