前回の続きですが、薄茶席で客一同の喫茶が終わりました。
50人弱の客に、茶が配られる間、正客と説明役は会話されたのですが、ほとんど聞こえなかった。席主のおしまいの挨拶後、普通の大寄せ同様、順次点前座と脇書院、脇床の飾りを拝見。点前座は、官休庵好みの自在棚が据えられています。木地で、置き方を百八十度変えることで、炉、風炉両方に使える独特な棚です。風炉釜は、棚に載せるのに都合良い、小ぶりの切り合わせで、大西の先々代浄中の作。水指は、風炉の時は、棚の一部のケンドン蓋付き袋棚の中に入れるので、平水指になりますが、青磁で、兪好斎(官休庵9代)の好みで二代諏訪蘇山作。茶器は兪好斎在判の二本松蒔絵で中村宗哲作、替えが同じく宗哲で一啜斎箱の帽子茶器。茶杓は文叔(官休庵2代)作共筒、眞伯(官休庵3代)箱の銘「姫さゆり」。蓋置は当代不徹斎好みの陶器の青竹写しと、流儀の名品が並びます。床の間向かって左の脇床には、馬越家旧蔵の茶碗帳というものがひろげられ、彩色された井戸茶碗のページを展示。側にはその茶碗の写真が載った売り立て目録とおぼしき本があります。めくれないので詳細不明。床の間向かって右の脇書院には、主茶碗の乾山と、茶器・茶杓の箱、一ノ瀬小兵衛作烟草盆に妙全の紫交趾と村瀬治兵衛作独楽莨入、長煙管と一式を仕組んで飾られ、それに馬越化生が米寿の折に配り物にした硯箱があります。硯箱は、平福百穂の下絵で、守屋松亭蒔絵で、小ぶりのもの。昔の富豪は贅沢なことをするものです。
さて、終わって、招いてくれた美術商に挨拶して、会場を出たのは15時過ぎ。茶室にいた時間は案外短かったようです。久しぶりの茶会、楽しくなかったわけではないし、よい経験といえば経験ですが、何か今一つしっくり来ません。ガラス越しでなく、名器名品を見るいい機会といえば、勿論そうですが、手に触れることも出来ず、ただ見るだけというのも、やはり物足りない。待ち時間とか、基本的にあまり器物に触れられない点は同じようなものかもしれませんが、普通の大寄せの方が、お茶会ぽいような気もします。勿論、普通の大寄せの方がいいという気は全くありません。ただ私は、茶事か、せめて小人数の小寄せ茶会の方が、やっぱり好ましい。まあ、そういう会に招いてくれる知人で、今日のような名器名品を揃えて見せてくれそうな人も思い当たりませんが。今日の道具組、濃茶席は文句のつけようがありませんし、薄茶席も流儀の一級品で纏められて素晴らしい。ただ、食事席、寄付き、玄関の軸は、茶会として見た場合どうもぴんときません。ことに玄関は、馬越家ゆかりの道具を見せるという趣向とはいえ、この軸はあまりに季節違い、展覧会と割り切ればともかく茶会としての道具組としては、やはり違和感があります。勝手なことを言わず、もっと素直に楽しめと叱られそうですが。
萍亭主