茶の湯の花入、皆様ご存知のことばかりと思いますが、一度、整理してみます。
花入は、使い方からいうと、置き、掛け、釣りの三種類になります。置き花入は、壁床以外の床の間には全部使えますが、掛け花入は、当然、花釘が打ってある席以外使えません。茶席たるもの、床の下座の柱には、必ず花釘が打ってあるだろうとお思いでしょうが、書院や広間などで、後から炉を切って茶室にしたなんて席は、案外、花釘がなかったりするものです。寺院などで、大寄せをする場合など、席に花釘がなく、下調べせずに掛け花入を持ち込み、当日、やむなくそれを床に置いたという失敗談を聞いたことがあります。ちなみに、我が家の広間の床は花釘がありません。床は框は真塗ですが、板床であり、下座の柱は太い竹という、長押はあるものの、広間としては砕けた造りで、落成当時は炉は切られていなかったのでしょう。柱が竹というこちもあって花釘は打たなかったのだと思います。柱に釘を打つのではなく、墨蹟窓の下地に花入を描けるようにした席もあります。燕庵、庭玉軒などその祖形ですが、写しの席以外あまり見受けません。掛け花入は、茶事で、双飾りでない場合は、原則に後座の時に、床正面の中釘に掛けるのですが、この中釘も打たれていない席も広間などにはあります。壁床は中釘を打たないのが約束だそうです。中釘が打っていなければ、軸用の釘から、垂撥(すいはつ)という道具を吊り下げ、そこに花入を掛けるわけですが、このやり方、案外お目にかかりません。我が家の広間は、中釘はあるのですが、どうも壁を塗り直した折に打ったのではないかと思っています。私の感覚では、茶事の後座で花入は、この中釘にかかっているのを拝見するのが好きで、置き花入で拝見する時より気持ちがいいように感じるのですが、仰ぎ見る故かもしれません。釣り花入は、床の天井にに蛭釘が打っていないと使えないわけですが、これも打っていない席は、案外あります。三尺間口の床や、天井の高い広間の床などがそうです。釣り花入は、特殊な風情があって良いものですが、置きや掛けに比べれば、使用頻度がグッと少なく、なかなかお目にかかれないという経験は、皆様も同じだろうと思います。
茶の湯には、何かというと、「眞行草」という事が言われますが、茶道具にもこれが使われます。しかし、それによって厳しく扱いが変わるという事は、それほどありません。例えば、茶杓は無節が眞、元節が行、中節が草と言われますが、普通の茶の湯で使われるのは殆ど中節だけで、仮に真行の杓を使っても、それで扱いが変わるというものでもありません。それに比べれば、花入は、材質によって、真行草の扱いが違う方です。もっとも、それは畳の床の時に、置き花入を置く薄板の種類の扱いが違うだけです。皆様、ご存知でしょうけれど、流儀により差があるかもしれませんが、私が習ったのは、次の通りです。古銅、青磁、染付、祥瑞、彩磁、白磁が真、釉薬の掛った国焼、古銅の形を模した楽焼は行、南蛮・備前などの無釉の陶器、楽焼、竹、瓢、籠、その他の木工品は草。真は矢筈板(周囲が矢筈[<]形に切り込まれた真塗の長方形)に、行は蛤端(周囲が貝の口の長方形で真塗)に、草は丸香台(真塗か溜塗の円形)に載せるのが決まりで、草の中でも無釉の品は、木地か焼杉の蛤端でもよく、籠は一切薄板に載せない。板床では全ての花入を薄板に置かないので、畳床の場合だけの差です。掛けや釣りの場合はどうなんだと思いますが、釣り花入は、砂張や陶器は行で竹や籠は草だと聞いたことがありますが、扱いに違いがあるわけでもない。掛け花入は置きに準じるのか、よくわかりませんが、扱いに違いもなく、要はなんとない格式の違いでしょうか。置き花入でも、古銅以外のカネの品や、青磁や染付でも和物なら真行どちらだとか突っ込みたくなりますが、これらは多分唐物並みに真での扱いになるのでしょう。三島や粉引の朝鮮産のものはどの部類か疑問ですが、手元の本には解答がありません。
続きは又。
萍亭主