前回の続きですが、一泊したホテルから、朝の散歩に出て、大乗院庭園を抜け、ぶらぶら元興寺に来てみると、おや、こんな看板が立っています。
「珠光茶会」とは何か、関東者の私は全く知らず、この日は2月8日でしたが、開催して三日目にあたるようです。どうせ事前申込制でしょうから、はなから入場は諦めましたが、知っていれば、事前に申し込んだかもしれない。しかし、珠光の名を冠する何かいわれがあるのか、一瞬、珠光の命日付近?と考えましたが、伝えられる命日は五月ですし、誕生日は不明なので、その手の因縁ではない。ポスターをよくよく眺めてみると、今年は第九回で6日から12日まで、春日大社に東大寺、薬師寺、法華寺、元興寺、大安寺、唐招提寺、西大寺が会場で、表千家、裏千家、武者小路千家、遠州流、石州流、藪内流、宗徧流の七流が担当とあります。ほーう。後で調べると、「奈良は、遣唐使が唐から団茶を持ち帰って以来、茶の湯の文化と深い関わりが続き、ゆかりのある茶人としては、大和郡山に少年時代を過ごした小堀遠州、大和小泉藩主の片桐石州がおり、中でも室町時代、この地に生まれた珠光によって作られた侘び茶は、千利休により大成され、現在の茶の湯の基礎となった。その原点の地である奈良の魅力を茶の湯を通して発信して行きたい」というような趣旨で、観光協会のバックアップで実行委員会が立ち上げられたようです。毎年二月開催というのは、京の冬の旅同様、観光の非繁忙期(閑散期)だからかと邪推します。平成26年に第一回が行われ、この時は会場は同じで、三千家と遠州流だけが参加し、以後参加流儀も増えたのでしょう。今年が第九回ということは、先一昨年はコロナ流行の直前で開催出来、一昨年は流石に中止、去年再開とおおむね他の催事と同様の歩みを辿っているようです。コロナ以前は、一席で一日300人の客と、かなりの大寄せで点心席などもあったようですが、今年は、一日70人から100人と客数も制限されています。各社寺、一日だけの開催で、七流派がそれぞれ担当となっていて、西大寺だけが、自前で40人の客で大茶盛をやるとなっています。西大寺の大茶盛は、昔、参加したことがあって、巨大な茶碗で回し飲みする遊び感覚を記憶しますが、このご時世、回し飲みはありますまいから、一回8人の客に、あの巨大茶碗を八つ出したのか、主客共に大変だろうと余計な心配をします。社寺の他、奈良町の会館等で地元のグループが亭主役の茶会が四日あり、中でもそそられるのは、奈良国立博物館の八窓庵が会場で、一回5人で一日四回全客数20人という会。これは経験してみたいなと思いますが、たとえ来年同じ企画があっても、この人数じゃ券は入手出来そうもない。
さて、七流が顔を揃え、名刹古社を舞台の茶会、ポスター面はカッコイイですが(失礼)、中身は味わってみないとわからない。でも東京でこんな茶会が行えるかというと、ウーン、難しそうです。地理的に広すぎるとか、名刹があるかというようなことはともあれ、タイトルにかつぎ上げるような縁がある茶人がいない。江戸にも山田宗徧や川上不白など、ゆかりのある茶人はいますが、珠光、紹鴎、利休といった流儀を超えた大物はいない。この辺、やっぱり上方には敵いません。
萍亭主
