先回の続きですが、陶磁器の建水は、カネに比べ、変化に富み、種類も多く、その点が人気があるようですが、弱点もあります。

 茶碗、水指、蓋置、炉の香合など、茶席の道具は、陶磁器が多く、それと重ならないようにしなければならない面倒臭さがあります。例えば、茶碗が専門の楽焼でも、千家の注文で建水も結構作ったりしていますが、楽茶碗が茶席に現れる確率が多いだけに、楽の建水は、使い所が少ない。花入が信楽、水指が備前、茶碗が楽、替茶碗が唐津、蓋置が瀬戸、香合が染付、火入が丹波なんていったら、持ち合わせにもよりましょうが、建水は陶器じゃないのにするか、となりそうです。道具組をするとき、建水は大抵は最後に決めますから、どうしても割を食うことになります。

 第二の弱点は、茶碗の湯を捨てるときに生じる危険性。万一、茶碗の縁をぶつけたりしたとき、最も茶碗が破損しやすいのは、陶磁器の建水なのです。初心のうちは、気をつけないと案外これが起こるもので、実例も聞いたことがあり、大切な茶碗を使うときは、絶対に曲建水しか使わないという方もあるそうです。

 第三は、贅沢な言い方をすれば、古い良い品が意外に少ない。近代でも、現代でも、造る窯や作家が少なく、良いものが出ないということです。もちろん、新物の茶道具屋に行けば

陶磁器建水は一杯ありますが、それは稽古道具の域を出なくて、例えば人間国宝の作の建水など、なかなかお目にかかれないというところがあります。無理もないというか、同じ手間で作るなら、花入や水指を作る方が、窯としては、売れ筋なんだし、経営面からも創作欲からも、建水は作られにくいという指摘は、なるほどなと思います。

 前回、海外産の陶磁器建水に触れましたが、和物(国焼)はどうかというと、江戸時代の中期に書かれた「茶道筌蹄」に、国焼の建水として、「備前、信楽、伊賀、丹波、瀬戸」の五つをあげているそうですが、今も通用する妥当な選択でしょう。中でも、備前は、紹鴎利休の頃から、名物視される品も多く、南蛮と同じような観点から愛用されたのです。信楽や伊賀は、野性味が愛されるのでしょうし、丹波も何気なく地味で脇役っぽいところがいいとも言え、今も建水がわりに作られるようにも思います。瀬戸は利休も一番愛用したようですが現在は一級品があまり出るような気はしませんが。この5つ以外にも、建水の優品で有名な窯は唐津、高取、小代など九州の窯で、小鉢などの見立ての品も含め、昔から今まで、結構愛好されています。ついでですが、淡交社の出した「茶道美術鑑賞辞典には、それぞれの道具の沢山の名品が紹介されていますが、建水は二点しか紹介されておらず、その一つが高取焼建水です(後一つは南蛮砂張です)。逆に、織部や志野は、古い品には、絶対に建水はないそうで、あれば現代のもの、これは萩や出雲も同じだそうです。いずれにせよ、国焼も古い品はなかなか手に入りにくい、現代の作家ものも少ない、当然、稽古用クラスが多くなるということでしょうか。続きは次回に。

   萍亭主