所用があって、新宿の京王百貨店に行きました。
百貨店に行くなんて、何ヶ月ぶり、京王も久しぶりの上に、食料品売り場に立ち寄るのがせいぜいで、他の売り場に行くことは、ずっーと、なかったような。妻が用を足している間、ひまなので、美術品売り場を覗いてみました。ここには、茶室が併設されていて、茶の湯道具関連の展覧会の時は、添え釜があり、知人の先生が掛けられたりすると、よく伺ったもので、いろいろな作家の展覧も見たものです。買った覚えは三度くらいしかありませんが。そういう掛け釜も、三年前から行われなくなり、コロナ流行と共に、こちらも訪ねなくなりました。昔を懐かしみながら、展覧会場を覗くと、鮮やかで派手な桃色の陶器が目に飛び込んで来ました。あ、もしかしたら万古焼?昔、美術市や何かで見たことのある、古万古焼の品を思い出したのです。古万古の桃色より、もう一段、派手で洋風ピンクな気はしますが、桃色の釉薬は古万古だけだし、これは万古の系統ではないかと思ったのです。会主らしい老人の方が、よろしければと、宣伝葉書を差し出されたので、頂いて見ると「森一蔵作陶展」とあり、やはり三重県桑名市の窯元でした。県や市の文化賞を受けておられ、昔の走泥舎の同人でもあり、京王では四十年も前から個展をやられているそうですが、私は行き違ったとみえ、全く知りませんでした。水指、茶碗、鉢など、茶道具系が多く、皿やぐい呑みもあります。桃色だけでなく、銀彩や色絵のものや、五色の絵の具を塗ったような感じの碗など新感覚な品もあります。創作茶道具系の取り合わせには喜ばれそうな気もします。しかし桃色一色の水指など、使うには勇気が要りそうで、もっとも、そう考えるところに、私の茶の湯の限界があるのかも知れません。自由にこういう品を使って茶の湯を楽しむのも悪くなさそうですが、やはり、私には空想の域を出ないようです。しかし、腕の良い作家さんなのでしょう、古万古の赤絵写と思われる鉢と火入があり、これは、古風さも寸法的にも好もしいもので、こういうものの方が、使いよい売れ筋の品なのではと思うところが、私の古さなのでしょうか。頂いた葉書を見ると「江戸万古赤絵南蛮人物図盛盞瓶」という写真が載っています。江戸とはありますが、常識的にみて、この作家の作で、そう名付けたのでしょう。実物は見ませんでしたが、これも鉢や火入同様、古風ないい感じがします。
この歳になっても、知らない作家や、初めての出会いというものはあるもので、たまたまの百貨店行きがいい勉強になりました。森というお名前、もしかしたら、万古焼の中興、森有節のご一族か何かなのでしょうか、尋ねてみたら良かったのですが。
萍亭主
