前回の続きですが、若手のYさんが、初めての亭主の茶事、初体験が主客共に、いろいろあったわけですが、道具の初使いというのも、亭主には嬉しい体験ではないでしょうか。

 好きなお茶碗を買って、一人で日常しみじみと愛玩するというのも、良い趣味ではありますが、自分の好きな道具を使って、他人をもてなすというのも大きな楽しみでしょう。他人が家に遊びに来た折、一服差し上げるという機会もあるでしょうが、やはり、茶会というハレの場で、自分の道具を使うというのは充足感があると思います。自宅に茶室がないと、なかなか茶会は開けないので、Yさんも今回が初亭主ですから、Yさん所持の道具も初使い、世間への初お目見えです。道具は、その持ち主の茶風、つまり趣味嗜好を端的に表すもので、その人が見かけによらず地味好みだとか、綺麗で派手なものが好きか、同じ綺麗なものが好きでも、微妙に違ったりして面白いものです。Yさんが今までに集められた茶碗を見ると、なかなか筋がいいようです。箱書付きとか、ブランド品とかいう方向ではありませんが、しっかりした作りの、気持ちいい品で、怪しげな感じが全くないのがいい。濃茶碗は、大樋長寿の飴釉茶碗。

 私も、この陶工の作は好きで、このブログでも、2019年5月17日と、2020年11月6日と二度にわたって取り上げましたが、昭和初期には須田菁華と共に北陸を代表する陶工で、大宮御所に納品するなど、当時は知名度がありました。濃い独特な飴釉は長左衛門家の飴釉とはまた違う感じの趣があります。

 薄茶碗は、共に京焼で林淡幽の祥瑞移しと、先代田中寿宝の銀彩竹の絵。

 林淡幽は、建仁寺から五山窯という名を貰い、三千家にも出入りし、染付系が得意ですが、この祥瑞もなかなかいい発色です。田中寿宝は、二代久世久宝の甥で、南画を学んでいだだけに、その絵付けは上手なものです。いくつかの候補の中から選んで使用した薄茶器は、神代杉の木地に蒔絵した若草棗(漆壷斎作)で、茶碗にあったいい選択だと思います。

 薄茶器と取り合わせた茶杓は、お正客の干支に因んだ銘で、趣向が首尾一貫していました。Yさんが、今後も、この嗜好と感性で茶道具を集められれば、また、いいお茶会が開けることでしょう。

   萍亭主