近年、我が家の秘密兵器をご覧になって、導入をされた先生が二人いらっしゃいました。お二人とも、住居を改築されるのを機に、導入を決められたのだそうです。
実際、そういうきっかけでもないと、導入の踏ん切りはつけにくいかもしれない。秘密兵器には、利点と同時に欠点もあります。正座出来ない人にとって、従来と変わらない稽古が出来るという点では、これは多分、第一の優れものだと思います。欠点は、これが稽古道具だということです。勿論、これで茶会が出来ないわけではありません。例えば、洋室でも、これを置くことは可能なので、前に書いた日常の茶事、式正でなく、現代の侘びとしての茶事なら、テーブル茶会よりは、従来の茶会に近く、改まった感じでやれそうにも思えますが、実はそこに落とし穴があって、従来に近く改まってやろうとするほど、寄付きや懐石などの作法が従来風になる、そうすると、住居環境とマッチしなくなる。テーブル茶会の喫茶の部分だけをこれでやるなら、テーブル点の方がリーゾナブルだし、年に何回も人を招かないのに、これを備えて置くのもということになるでしょう。仮に、正座出来ない亭主やお点前でも、大寄せ茶会などの一席なら、従来の立礼棚で、それはそれなりの雰囲気を出せますし、亭主は正座出来ず椅子に座っても、正座可能なお点前さんを動員すれば、従来の茶室でやる方が、雰囲気があるということになりそうです。従来の茶事の場合も、これを使ってまで、茶事をやろうという人が、どれほどいるか。つまり、現代の式正の茶事にも、侘びの茶事にも、中途半端なのかも知れません。
稽古道具としても、弱点があります。稽古場をお持ちの先生でも、稽古用の広間が一つだけとなると、これを備えても出したり入れたりは、やはり面倒になるかもしれません(八畳で、従来の炉の位置と出入口の位置がうまく奇跡的に合致すると、従来の炉とこれと両方備えられる場合もありますが)。我が家は古い様式の畳の部屋だらけの家なので、導入もしましたが、一つしかない稽古場を、これ専用にするというのも、決断が要ることかもしれません。マンションの稽古場など、この方が便利だろうとも思うのですが、従来の茶室と違う所で、初心の人を迎えるのも躊躇する事でしょう。以前、大きな先生に「先生のところはお弟子さんも多いし、これを導入なさったら如何です」と戯れたら、「こりゃ楽でいい、でも、これを使うと、若い人でも、痺れなくていいというので、こればかり使いたがりそうだな」と笑われました。易きにつくのは茶の湯の禁物かもしれません。はるか昔、ある方が「六畳が空いたので、茶室にしようと思ったら、マンションの構造で、炉が切れない」と嘆かれたので、「風炉でなさればいいじゃありませんか、風炉は元来季節を問わないそうですし」と、知ったかぶりを言ったら、「炉が切ってなくちゃ、お茶室じゃないわよ、そんなところへ人は呼べない」と不機嫌になられました。その頃は、秘密兵器など考えもしない頃でしたが、今、あの方が生きておられて、これをお薦めしたら、やっぱり「これじゃお客は呼べない」と、仰るでしょうか。
萍亭主