前回の続きですが、初心の頃、道具組について私が頼りにしたのは、やはり先代の書庫にあった「茶道歳時記」(佐々木三味著、晃文社刊)です。
「茶道具入門」より更に20年以上古く、昭和21年、終戦の翌年の出版です。それぞれの月別に、まず茶趣を説き、行事を挙げ、その月に用いられる茶花を上旬・中旬・下旬に分けて挙げ、菓子を列挙、懐石の献立を二例ほどモデルを示し、旬の食材を書き、最後に季語を挙げる。俳句の達人でもあった佐々木氏らしく、行事と季語の欄には、それぞれ茶の湯関連の新古の俳句が紹介されています。行事の欄には、それに相応しい道具が挙げられ、季語を知ることで、そうか、この蒔絵の道具は、この季節でで使うのね、などと覚えたものです。なお、十二月の後に、雑として、披露、慶祝、送迎、仏事の場合をあげています。写真類は、当時のことですから、一切ありません。大分後に(たしか昭和50年代、佐々木氏の逝去後だったと思いますが)、カラー写真入りで、文章なども、かなり改訂されて、淡交社から出版されました。その後、他の人たちによる「取り合わせの工夫」とか「季節の道具組」なんてタイトルtで、入門書が出版されたり、流儀の機関誌が毎月取り上げるような事が繰り返されていますが、この本は、それらの原点、はしりとも言えましょう。ただ、その後のものは、殆どが、具体的に、一席の道具組をして、つまりモデルケースを作って展示する、というやり方ですが、「茶道歳時記」は、それを一切していません。前にも触れたように、懐石はモデルケースを書いているのですが、茶については、しない。ただ、この季節、催事にふさわしい道具は、こんな品が考えられるということは示しても、一つ一つをどう取り合わせるか、活用するかは、個人次第ということでしょう。
ともあれ、初心お頃は、この本のおかげで、季節、季節と頭に入れながら、道具組を考えるようになりましたが、その頃は、頭でっかちな状態ですから、実際に置き合わせてみると、妻から「その茶碗と棗じゃ大きさのバランスが悪すぎる」とか、「その棚に、その水指置いても、はえない」とか、ブーブー言われて、大事な季節の表現だから、これでいいんだと強情を張ったものの、やがて、見た目の大切さ、美しいと思えるバランスに目がゆくようになり、「成程、季節感があるからといって、ピカピカの新品の蒔絵の棗と古い茶碗は取り合わないな」と、仙翁氏の指摘するような当たり前のことが理解できるようになりました。そして茶室と道具のバランスということにも、やっと目が向くようになったのです。しかし、それでも道具にこだわり過ぎて、少し無理?みたいな事をした時もあったと思います。
季節第一に拘りながら、茶会をやっている内に、ちょっと足を止めるような言葉に出会いました。堀内宗心宗匠の書かれた本の中で読んだ言葉です。それは、また次回に。
萍亭主