今から23年前、NHKが放送した「茶の湯自在 千宗室vS北野武」(70分)のDVDを、知人が貸してくれたので、早速、見ました。

 1998年(平成10年)3月、前年に文化勲章を受賞した鵬雲斎大宗匠(当時、まだ家元)

が、前年「HANA-BI」でヴェネツィア映画祭金獅子賞を受けた北野武氏を招いて、一亭一客の茶事を行うという一種のドキュメント。家元が一つの試みとして「形ばかりにとらわれがちな現代のお茶に対して、茶の湯の真髄である人と人との出会いや、もてなしの心を改めて問い直してみたいと考え」それに相応しい客として北野氏を選んだという趣向です。北野氏は、櫻井宗梅(故人。高橋箒庵娘)の教室で、稽古茶事をしてもらい、足を痺れさせながら、一応の作法を学びますが「勉強して行く必要はない、むしろ、変な知識を持たず、素直に尋ねちゃった方がいい」という気になります。(この稽古茶事で、ナレーションが懐石の順序作法を説明しますが、画面はちゃんと進行しているのですが「焼物、そして煮物と進みます」と解説が逆に間違うのが気になりました)。当日は、北野氏は京都で和服に着替えて、席入り。一亭一客ですが、撮影の都合でしょう、一畳台目の今日庵でなく、四畳半の又隠で行われます。四百年前にタイムスリップした雰囲気にしたいと、軸は利休の遺偈(少庵筆)、花入は宗旦作の竹、茶杓は利休作、茶碗は黒楽の長次郎作など、裏千家伝来の重宝を揃えた道具組。迎え付けから、席入り、主客の挨拶と進み、懐石は半東の若宗匠千宗之(今の家元)が勤め、酒の相手もします。北野氏がだんだんリラックスして行くのが、自然な感じで面白い。中立して、北野氏が腰掛で旨そうに巻き煙草を吸うのが、時代を感じさせます。すごく良い銅鑼の音で後入りし、濃茶、後炭、薄茶と進んで、無事終了。懐石、関守石、躙口、茶杓の竹、焼き物、映画などに関する主客の会話が紹介され、北野氏の個性もあって、軽いユーモアを常に感じさせながら、平易に進行します。終わって、北野氏の「所作がすごく厳しい、細かいことがいっぱいあるということは、その中で、いかに自由にやれるかの勝負であって、いろんな立居振る舞いや所作を全部取っ払って好きなようにやりなさいと言われて、果たして自由にやれるか、逆だと思う。(中略)規制や所作は、ちゃんと完成してあるのは、その中にどれだけ個人の自由さとか発想が入って来るのかと思う。どうしてこういう形になるのか、こういうお茶の飲み方になるのかは、やりながら覚えないと、近づけないような気がする。(中略)自分自身が悩まないと駄目かな。自分でちょっとやってみますよ」という感想と、家元の「「非常に楽しいお茶事でございました。謙虚な態度でね、来る途中で勉強して来たけど、全部忘れてしまった、よろしくお願いしますという挨拶を最初になさったが(中略)非常に素直な、そういう意味におきましては、北野さんは素晴らしいお茶人になっていただけると思うんですよ。初めてのキャッチボールとしては上出来じゃないですか」という感想が述べられ、最後に「北野武さんにとっての初めての茶事、これから、たけしさんの中に、どんなお茶が生まれて来るのでしょうか。利休はこんな歌を遺しています。茶の湯とはただ湯を沸かし茶を点てて飲むばかりなることと知るべし」というナレーションが流れて終わります。うーん、面白かった。ことに初心者には、見せてあげたいビデオです。

  萍亭主