文化庁のアンケート、茶道を次代に伝えるために守らねばならない大事な要素の一つ、「茶室・露地などの伝統的な和の空間」。得票率は高くなかったのですが、これが何故大事な要素と思うかという問いに対する答をまとめた報告が、次の文です。

 「茶室・露地などの伝統的な和の空間は茶道を茶道たらしめている要素のひとつとして欠かせないもので、茶室、露地などの場・空間と作法や点前は切り離せないものであり、茶事、茶会を行うための重要な場である」と定義が述べられ「しかし、自然と伝統が共存する茶室・茶庭等は、生活様式の変化のー中で、急速に失われつつあり、これらは一度途絶えると、元に戻せない。茶室・露地での所作は、これに伴って消滅して分からなくなってしまうため、茶室・露地などの和の空間それ自体も残していく必要がある」と、結論づけています。まことにごもっとも。

 では、その現状は?という問いには「茶室・露地を維持し保全管理に努めている流派もある一方で、建築費や維持・管理のコストがかかることが大変との指摘がある」とありますが、これも、茶道をおやりの皆さんは、とうにご存知のことでしょう。「茶室を持つ先生も限られており」とありますが、私もこのブログで何度か書きましたが、昔は茶道の先生でなくても、ちょっとした家には、茶室や、すぐ茶室に直せる部屋があったものです。昭和後期からの住宅環境の急速な変化は、大都市では敷地が狭く茶室を作れない環境が増えました。古い和風住宅が、相続で取り壊され、幾棟かの建売が建つのが見慣れた光景になりました。茶室を持っていても、露地はないという先生も多数あるでしょう。「会場を借りて茶会等を行う場合も、施設の数が少ない上に、火気の使用の制限などあり、炭を使う茶会ができないなど、本格的にお茶会を

開催する場所を探すのにも苦労する」と報告されていますが、公的施設など、炭駄目は多いですよね。報告には書かれていませんが、茶室の借り代が高く、簡単に安く茶会が出来ないのも、現状では問題だろうと私は思います。

 今後、どういう取組が必要かという問いに、「既存施設の整備、維持、管理に努め文化財としての保全や、行政や地域による財政的支援、学校教育で価値を伝えて行くことが必要」というような声があるそうですが、財政援助は是非と思いますが、文化財に指定されるような茶室しか援助は来ないでしょうし、本来裾野を広げる上で大切な、街の個人所有の茶室など、相手にされず消えて行くのでは。また「重要性を理解するためには、保全するだけではなく、積極的に活用して行くことが必要であるため、見学会の開催や茶会での利用や、それを所有している団体との連携行事の開催により、効果的に魅力を伝えていく事」が提言されています。たしかに、社寺や団体で茶室を所有していても、非公開で茶会にも貸さないところは沢山あります(たまに特別公開とか高い拝観料で見せたりしても)。従来の大寄せ茶会式だと使いにくい施設が多いことも確かですが、たしかにもっと茶室が公開されれば、活性化の一助かも。家元の茶室なども原則非公開で、流儀の人でも直門でもないと、特別な茶会の日くらいしか入れない。他流には絶対公開しないような面がある、こういう辺は、もう少し風通しをよくするといいかもしれません。

 しかし、今後、街の茶家は、今の生活環境に合わせて、従来の形とどう折り合いをつけるかを考えて、茶室を造り維持するしか仕方ないかも知れません。個人の工夫だけでなく、家元などの指導者も指針を示すことを考えるべきではとも思います。

    萍亭主