茶陶の旅、清水五条坂は大体終ったので、これから粟田口に廻ろうと思いますが、その前に、横っ事ですが、ある体験をしましたので、正直にお話ししましょう。

 先の日曜日、東美アートモールに行った時、実は買い物をしました。ある店で茶杓を買ったのです。初めて付き合う店でした。茶杓の銘が気に入ったので、つい手が出たのです。茶杓は、三代前の家元の作で共筒、ただ箱は先代の極め箱で、共箱はありません。私の鑑定眼など低いものですが、筒も箱も字は流麗だし、良さそうなので、無遠慮に「これ、大丈夫かい?」と、声を掛けてみました。店主は「古いちゃんとしたお茶の家から出たもので、他の道具も引き取ったが、あそこから悪い品が出るわけはない」と胸を張ります。そして、宛先だけ隠した、古い領収証を見せて、そのお宅に納まった時は、昭和51年だが、55万円しているというのです。今のご時世なので、三分の一以下の値段しかつけていません。貯金を下ろせば何とかなるかと、思い切って買う気になり、でも、家元の方に見せて駄目だったら引き取るか、と念を押すと、うちは保証商売をしているから、そんなことがあれば勿論引き取るという答。カードで買いました。昔は骨董買いは現金が鉄則だったのに、世の中、変わったもんです。

 親しい道具屋さんに経緯を話すと「東美の催しである以上、偽物だったら、必ず引き取るし、その店も知っているが、目利きはともかく、その辺は大丈夫な店」との事、「昭和の昔は、その位の値段はしたろう、今の値段としては安い方かも。ただ、鑑定してもらうなら早い方がいい」と。早速、知人を通じて、家元の方に依頼しました。木曜には返事があり、金曜には品が戻って来ました。結論は、箱も筒も良い、しかし、中身の茶杓が全くいけない。櫂先の幅が狭すぎる、節裏が違う、切止の削り方が全然違う。がっかりです。店の方に電話して「通らなかったよ」というと「ええっ!」と、びっくりして「先代の箱もですか?」、これには自信があったのかも。詳細を話すと「そう言われちゃあ仕方がない、引き取りに行きます」と潔い態度。土曜に現金持参で引き取りに来ました。こちらはカードで買ったので、彼には5%の損をさせたのかも知れません。茶杓を眺めて「あのお宅(前の所有者)で中身が入れ替わったとは考えにくい、納まる前に変わってたんでしょうね。難しいもんだ」と溜息。「お互い災難だったね」というと「悪いものを売るわけにも参りませんから」と挨拶して去りました。

 思えば、このブログで、昨年の6月29日から7月15日まで、茶杓について、延々と、私なりに蘊蓄を傾けたのですが、特に7月7日は茶杓の贋物について書いたのに、自分がこんな体験をすることになろうとは。茶杓だけは、信用のおける店で買え、ゆめゆめネットオークションなどに手を出すなという教えは、くれぐれも守るべきでしょうね。

 明日はブログを休みます。

    萍亭主

 

 追伸 一昨日のブログについて、幹山伝七家の情報をお寄せいただきました。六代の後継者(繁太氏)が、京都で洋食器作家として個展を行い、現在、推定46歳くらいで、京都で窯業を行なっているようだ、との事です。