夏に中止になった東美正札市が、ついに冬も中止となりました。

 東京美術倶楽部が、七月、十二月の第一週、中元、歳暮の時期に長いこと行なってきた売り立て、骨董好きには人気の市ですが、淋しいことです。その代わりに、形式を変え、名前も変えた市を開催するとのこと、名前は今風に、Tobi Art Mall 2020 だそうです。

 

 どうも形式は、隔年で行われていた「東美アートフェア」と同じように、小店舗がいくつも並ぶ形式のようです。ご存知の方も多いかとは思いますが、一応解説すると、正札市は、入場無料、誰でも入れて、場内一杯に品物が正札付きで並べられ、どういう店がどの品を出品しているか、素人にはわからない。欲しい品があれば、買い上げ札と交換して、後で支払いと受け取りをするのですが、ミソは、一旦札を入れても、他にもっと欲しい品が見つかったり、目利きと相談して買うに値するか聞いたりして、入れた札を返すことが可能なことなのです。また、原則、売主が品物の傍についていて、うるさく薦めたり、解説したりすることはない(近年、やる人もたまにいますが)、というのが気楽に品定め出来る良さでもあります。

 アートフェアの方は、入場料千円、物を売るのに入場料を取るんかい、と一時は不評でしたが、何となく定着してしまいました。入場券は当日会場でも買えるシステム。出入りの骨董屋から、優待券も出ます。店主が目の前にいるので、気軽に取り上げて品定め出来にくく、品の一時抑えも出来ずということですが、昔風に骨董屋を冷やかして歩き、店主と無駄話、骨董談義を楽しむタイプの人には向いているかも。でも混んでいるので、街歩きの時ほど、ゆっくりは冷やかせない。交渉次第で値切れるのも悪くないところかも知れません。

 今度のアートモールは、入場するのに招待券がいるそうです。つまり、骨董屋に知り合いがないと、入れないわけで、一般には門戸開放しないシステムになります。三密を避けるためでしょうが、本来誰でも自由に覗けるというのが、この世界の常識、それが覆るわけです。

 思えば、正札市も幾変遷、中国語が飛び交い、身動き出来ぬほど人が詰めかけ、中国向けの鑑賞陶器が幅を利かせたり、バブル絶頂期、開催直後に、ほとんどの品に札が入ったり、伊万里に人気の出た昔は、飯碗や皿の類が、山積みされたり、そんな中でも、茶道具は一定の主流を占めていたものですが。ここ六、七年は、暴落傾向が止まらず、それは客にとっては悪くないかも知れないが、比例して、面白い、珍しい、しっかりした品物も激減し、つまらなくなった、活気がなくなったとの声も聞こえますが、それでも、やはり、中止と聞くと淋しいもの。全くコロナはいろいろなものを消滅させますなあ。

  萍亭主