先回の続きですが、遠山記念館に行った本来の目的は、展覧会を観るためで、テーマはは「近代の皇室と茶の湯」です。

 これはちょっと珍しい展覧で、第一室は、明治天皇に関する献茶関連や、山階宮、有栖川宮、小松宮、久邇宮など明治期の皇族に関する茶の湯関係資料が展示されて、第二室には、貞明皇后(大正天皇妃)が、大宮御所(青山御所)内に作らせた茶室「秋泉」に関する展示です。

 明治天皇は、明治10年、初めて献茶を受け、この後もしばしば献茶を受けています。最初に献茶をした人は、宗徧流の家元を一時預かったこともある、旧龍野藩主脇坂安斐で、フロックコートを着て点茶したという話です。場所は第一回内国博覧会の会場でした。明治期の皇族は、茶の湯好きが多く、いろいろな逸話も多く残っています。今回も有栖川宮の手造り茶碗など、面白いものが展示されています。

 貞明皇后は、茶の湯好きで、御所内に茶室を建てることを望み、昭和4年に茶室を完成させました。「秋泉」という名前は、昔、皇太子を春宮と呼び、それに対し、前の天皇関係を秋宮と呼んだからという説もあるようです。茶室の設計は、武者小路千家の重鎮、木津宗詮(三代)が起用され、この功で「泉」の字を賜り、この代だけ宗泉と名乗ったと聞いた事があります。茶室で使う道具は、三千家、薮内家、木津家が、命を受けて調進しました。昭和20年の空襲で、御所は全焼し、茶室も茶道具も全てが失われました。しかし

各家は調進する時、控えとして、同じ道具を作らせ手元に記念として残したものも多く、それも長い年月のうちに散逸したものもあるようですが、今回は、それらを集めて展示されています。詳しい内容については、展覧会を見ることをお勧めしますが、普通の展覧会よりも、集めるのはなにかと大変だったろうと思います。普通の茶の湯の展覧会は、大体、テーマに関連性のある名器を揃える事が多く、名器の所在は大体分かっていますから、借りる交渉だけで済みますが、探すのは大変でしょう。今回、この時に裏千家の淡々斎が好んで調進した秋泉棚は、控えを中村宗哲に五つ作らせた記録があるが、ついに一つも所有者が見つからなかったそうです。もう一つ、面白いなど思ったのは、茶道具の調進に関して、どの家に何を発注するかという仕分けが、ちゃんとランク付けされていると思える点でした。

発注者の大宮御所側の誰かの感性によるものでしょう。

 皇室と茶の湯については、先年、雑誌「淡交」に一年間研究を連載された依田徹先生が、遠山記念館の学芸員として、この企画を立てられたので、一味変わった展覧会になりました。

   萍亭主