極め箱は、工芸家が書く場合と、研究家(学者)が書く場合とありますが、茶の湯の世界では、どうも工芸家の方が人気が高いように思います。何故でしょう?

   昭和くらいまでは、研究家が極めを書くなどという事はなく、歴史的に馴染みが薄いとかいうこともあるでしょうが、工芸家の場合、その品の作家の子とか孫とか、縁のある(これが茶の湯では大切なんですね)人が書くのが、雰囲気ありと茶の湯世界では思われるのでしょう。

   しかし、鑑定というのは難しいことで、極端に言えば十人十色です。随分昔ですが、私は、母が持っていた染付の大海茶入と、三島のような象嵌のある平たい茶入を鑑定してもらったことがあります。箱は古いもので表に「染付茶入」「高麗茶入」とそれぞれ書いてありました。

    まずカルチュアセンターで、研究者で当時焼き物鑑定の入門書を出したりしていたD氏に見てもらいました。箱はちらっと見た後、染付茶入は「中国ですね」「いつぐらいの?」「明末清初ですね」、高麗茶入は「朝鮮物ですね」「いつ頃の?」「さあ、古いですよ」「茶道具じゃなく見立てのような気がするんですが、元は何?」「わかりません」という問答で終わりました。

   その後、当時美術商で後に鑑定で有名になったN氏に見てもらいました。箱を暫時見た後、染付は「お庭焼みたいな感じですね。江戸後期でしょう」、高麗の方は「八代(やつしろ)あたりだと思います。これは灯具ですよ、元は。箱のイキから見て、結構昔から茶道具に使われたんでしょう」と全く見解が違います。一体どちらが?

   大分後に、ある茶道具屋に見せたところ、「染付は国焼ですね。犬山辺かも知れないか

 これは昔は共蓋があったでしょう。こちらは九州ののどこかですね、朝鮮の可能性は、うーん、もとは灯具には違いないですね」

   こういう経験は、その後、何回かあります。いずれまたご紹介したいと思いますが、なかなか、どれが正しいかわからなくなります。

   なんにしろ、茶道具の勉強は難しい。アマチュアでも勉強すれば、程度問題、道具の素性とか真贋とかわかるかも知れませんが、ちょっと難しくなればお手上げでしょう。良いものか悪いものかを直感的に感じられるようになればいいがと思います。

   ある道具屋さんが、こんな事を言ったことがあります。

  「美術館や博物館の学芸員さんは、文化財クラスの良い物を手に取って、科学的な調査もし、文献も沢山調べる。学者さんには敵いませんよ、私達は」

   学芸員ではありませんが、ある学者さんが 洩らした言葉です。

  「道具屋さんはピンからキリまで幅広く、もの凄い数を毎日のように見てますからね、商売が掛かって見てますから、その経験にはちょっと敵わない」

    今回はこの辺で。明日はブログを休みます。

           萍亭主