「茶道具名工・作家名鑑」へのイチャモンも、そろそろ終わりにしたいのですが、当ブログの「名鑑にイチャモン」で書いた、第4条、作家歴代の記載についての疑問を。

   この本の歴代に関する記述法は、どうも統一性がありません。千家十職と清水六兵衛家は、特別扱いで歴代それぞれを一項目づつにして記述されていますが、その他の家は、記述法が二つに分かれます。一つは、当代、あるいは初代を書いてから、「歴代について」というタイトルで網掛けの地の上に、歴代を略説しています。このやり方で通したらよかったんじゃと思うのですが、もう一つは、当代(あるいは適宜な代)の項目と、初代または適宜な代の項目(複数の場合もある)を並べて掲載するやり方なのです。こちらの方だと、どういう基準で選ばれているかは知りませんが、私などは疑問を感じる場合もあります。どうして、この代を落とすのかなあなどと。

   くだくだしいので、ざっと書きますが、例えば宮川香斎家は当代と先代(5代)が載っていますが、4代香斎(永誉、隠居して香瑞)は、長く活躍した人で、この代から、久田宗也の勧めで真葛焼と名乗るようになった節目の名工で、載せた方が、とか、川瀬竹春は2代しか出ていませんが、初代が技法の創始で、昭和の名工として有名だったのにとか、上野焼の熊谷窯は当主が出ていますが、先代の茶入の名手熊谷紅陽があっても良いか、など。

   項目によっては、その人の説明の他に、先代や初代についての説明が文中で述べられていたりすることもあって、どうも不統一な気がします。ちなみに、この本は基本的にアイウエオ順に項目がある、普通の辞書などと同じ列記なですが、時々父子関係などで、アイウエオ順を無視して並べる場合もあり、戸惑うこともあります。

    さて、イチャモンのつけ納めに、気がついたことを。

   この本は、序文に、「茶道具の作者を知ると茶の湯の楽しみも増すに違いありません」とあり、それは私もその通りと思います。「茶会記を見るたびに『この道具の作者のフルネームがわかれば・・・』『この作者の作風をもっと知りたい』と感じていた方に、この一書が役立てば幸いです」とあるのですが、そのために選ばれた840余名のの記載者の選考基準が今ひとつわかりません。しかし、ここにあるように、茶会で遭遇する機会が多いということは、作品の流通度も考慮しなければならないでしょう。そういう意味で、もう少し気がついた名をあげておきます。

   釜師で人気もあり、作品が今でも多く流通していて名が落ちている人に角谷莎村がいます。角谷一圭の弟ですね。弟子の宝積正一も同様に忘れられています。

    金工で、よく作品を見る、一ノ瀬宗辰、木村清五郎も名がありません。

    陶工では、茶道具屋でよく見かける、高野昭阿弥、南口閑粋などが見当たりません。

    京焼の名家ですが、井上春峰、大丸北峰、三国丹祐なども、どちらかと言えば煎茶系のせいか、脱落しています。

    また、九州地方の作家で、現川焼(うつつがわやき)を復興した横石臥牛(よこいしがぎゅう)や、小岱焼(しょいだいやき)を復興した近重治太郎、指宿で黒薩摩を中心に焼く有山長太郎、上野焼の古い家の高鶴元など、地方の茶会でよく使われる名が見当たりません。

   きりがなさそうですから、この辺でやめますが、ともかく、折角のご苦労にケチをつけるようで恐縮でしたが、より良くなればと、余計な出来心で、お許し下さい。

      萍亭主