そもそも節電とはなんだろうか。
電力の節約のことである。当たり前だ。
ではなぜ電力を節約しなければならないのか。
原理的には節約とはあまり使いたくないものをしかし使わないではいられないからもったいぶりながら使うということであって、湯水のように使うことと全く使わないこととのあいだにある。
節約せよということは使うなということでも使えということでもない。
これらは余りにも当たり前の話ではあるけれども非常に重要なことであるから最初に強調しておく。
ではいま電力の節約について、どうしてわたしたちは電力を使わないではいられないのか、また、どうして電力を湯水のように使うことができないのか。
「なんで節電なんかしなくちゃいけないんですか?」と問う子供を黙らせるには「節電が必要だから」というトートロージーによっては足りない。
当たり前の話という思考停止の暗い水面に垂鉛を下ろして原理の水準に到らなければならない。
どうして電力が必要なのか。
わたしたちの住むこの日本は高度情報化社会・高度消費社会と呼ばれる。
電力が必要なのは特にこれら二つの高度化された日本の性質こそが莫大な電力を要求するからである。
だが電力が足りないのなら電力を要求するそれら二つの性格を手放せばよいのではないか。
わたしはそれは難しいと考えるし、仮に容易いのであってもそうすべきでないと考える。
つぎにその理路を説明する。
わたしたちは新しいベンリな技術が発明されるとそれを諸手を上げて歓迎する。
生活の中に広く浸透するにつれ次第にわたしたちにとっての重要度を増していく。
やがてはその新しいテクノロジーはなくてはならないものとなる。
そのテクノロジーがまだ歴史に登場する前の世界に戻ることはもはやできなくなっている。
これはたしかに反ってなんだか不自由な気がする。
なるほどたしかに一見新しい技術は人間の生活水準を向上させるよいものであるかのようだが、実際にはその技術に人間が寄りかかり依存することでもはやそれなしでは生きていくことができなくなり、反って人間の自由を損なってしまうデメリットがある…とされる。
そうした人間がみずから主体的能動的に生み出したものであるのに反ってそれに依存することで従属させられてしまうアクロバティックな運動のことを哲学の文脈では「疎外」と呼ぶ。
だがほんとうにそうだろうか。
「そう」というのは「疎外」状態になったとしても、人間がじぶんの内面からいまだかつて世界に実在しなかった新しい創造を達成することそのものはやはりよいことではないだろうか。
新しい物と触れることで人間の性質は不可逆に変わる。
もはやそれまでの存在ではなくなっている。
疎外論者は行動を選択する主体そのものの変質のもつ効果を低く見積もっているのではないか。
古いものがよく新しいものがダメだということを古い価値観から導くことは自制されなければならない。
いま議題は小粒の各論ではなくて、そもそもそれについて語りつつあるわたしたち自身の存在といういちばん外側に位置する問いである。
人間にとって人間性はコントロール不能な外部である。
一般化された新しい人間性質は動かせない与件である。
そのよしあしについてもまたそうした新しい現実の枠組みから話を始めるほかない。
新しい社会、新しい人間性質が現にここに横たわっているという原事実から目を逸らしてはいけない。
疎外論の限界はまさに一切の行動ができないことにある。
世界にコミットすることは世界に疎外されることに他ならないからだ。コペ転、カント。
さて具体的に情報社会・消費社会についてかんたんに考えてみよう。
現代の消費社会は目に見えない人間の関係の網に依存することで成立している。くたびれて寝落ちして夜中に目が覚めたとする。おなかが空いたから冷蔵庫を漁ったらすぐに食べられるものがある。これは奇跡だ。このように潤沢に物が溢れている状況は長い人類史的にはむしろ例外的事態なのである。しかしこの豊かさは同時にしばしば働き甲斐を損なってしまう分業システムを避け得ないということでもある。商品の生産や流通の過程には無数の人間が携わっている。
無数の人間が携わって成立しているものは動かせない(雑だけど…まあね)。
情報社会はわかっちゃいるけどやめられない。なんでって?なんでも。
以上から莫大な電力が必要不可欠であることがわかる。
ある程度は節電できたとしても根源的に莫大な電力消費を伴うライフスタイルそのものを変えることは困難であるし、また新しい人間的事態であるのだからやめるべきでもないのではないか(←南北格差)。
どうしていま電力が足りないのか。直接にはもちろん先の大震災で原子力発電が多大な損害を被ったためであるが…なんでだろう?そのひとつは有限な化石燃料による発電をやめようとしているからであるだろう。
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書き詰まった。
明日図書館に下調べに行こう。
原発についてはともだちの発表を参考にしようっと