つねにすでにそうであったのだったということになった、いや、あるいはただそうだったという話 | 陽炎の帯の上へちらりと逆まに映る鴉の影―どーすかΩ

陽炎の帯の上へちらりと逆まに映る鴉の影―どーすかΩ

この部屋の中にいるヤツに会いたいのなら もっと、寿命をのばしてからおいで

どうして、そのことは起きたのに他のことは起きなかったんだろう。

どうして、ぼくはできなかったんだろう。

既にして生きられてしまった事実性は決して動かない。


かなしいかな、かなしいかな、いかんせん、いかんせん。


でも、それならば、そうしたかなしみのパフォーマンス、

シュミレーションを演じてみせて、それで一体何になるって

言うんだろう。

今更こいつは何を言っているんだろう。

「話を聞いてくれって言ってるのはぼくの方だったはずだ」

なんて、どの口が言うんだろう。


なら、じゃあ、どうして、他のようにきみはしなかったんだよ。

そうだろ。それだけのはなしだろ。

他に話すべきことなんて何ひとつない。話して何が変わる。

これまでもそうだったし、現にそうだし、これからも、

いつまでもいつまでもそのままだと、ぼくは言っている。

わかるか。


もう一度言うぞ。

既にして生きられてしまった事実性は決して動かない。

ぼくはきみが世界を舐め切っていると言っている。


泣きたい奴は泣けばいいし、笑いたい奴は笑えばいいと思う。

そうだろ。だって現に面白いんだから。


ぼくはここで一切の意味づけを許すし、同時に、拒絶する。


きみはアンパスにはまり込んだ。

きみのオリジナリティなんてたかが知れてるんだよ。

じゃあやってみなよ。ほら、もちろん、ここがロドスなんだぜ。

どんなものでもいい、思いもかけないようなふるまいをとってみろよ。


「意味」か。まだそんなことを言っているのか。

そんなもの、とうに立ち去った後だろ。

もう、いいよ。できないんだよ。そんなのははじめから。

そうだろ。


できるなんて言う奴がいたらここに連れて来い。

ぼくが殴って目を覚ましてやるからさ。

そんな奴、どこまでもいつまでもインチキやろうだよ。

そんな腰抜けには何にもできやしない。


きみにできることがあるとしたら、たった一つだけだ。


かなしみから目を逸らすな。


ただただ、見ろ、聞け、抱きしめろ。

腹の底から味わえ。お前はどこにも行けない。

ここだけだ。ずっと、ここだけだ。


それは何度も何度も、回帰してくるだろう。

それはきみには、どうにもできない。

他のようならよかったかもしれないな。

それはそのとおりだけど、でも、そうはならなかったんだ。

きみはこうなったんだった。


だけど、ぼくは思うんだ。

たぶん、ここが世界のねっこなんだよ。

ここだけがきみのパスなんだと思う。


失われつつ、現れていること、現れつつ、失われていること。


きみはたぶん、もう知っているんだと思う。

だってもう、語られてしまったんだからさ。


これはほんとうの話なんだ、たぶん。

だってその証に、きみは泣いているし、笑っているじゃないか。

ほらね、これはきっとよいことなんだよ。


きみはこのようにあるし、やはり他のようにもあるかもしれない。

きみは呼び声に応えて、ふりかえる。


つながれ、とどけ、ひびけ。


それでいい。ただ、そうであったという話だ。