もしかすると鳩山さんの「腹案」というのは
「腹案はない」ということであったのではないか。
それは「それが存在することを否認されることでかろうじて
成り立っている」もの、「おのれが意味するものの取り消し
を求めるシニフィアン」であったのではないか。
つまり、それはヒッチコックの言う(らしい)「マクガフィン」
ではないか。
鳩山さんは「いやいやまだ大丈夫だって腹案があるし」
とは明言していなかったようにおもう。
というか、そうやって明言されないのが「腹案」であろう。
つまり、「首相の腹案」は、識者連による「どうせそんなもの
ないんですよ!」という「それが存在することを否認」する声
によって成立していたのではなかったろうか。
あるいは、鳩山フレンドリーなコメンテータによる(そんな人が
いたかよくわかんないけどね)、
「いやいや、腹案はそんなちっぽけなもんじゃないですよ」
という「おのれが意味するものの取り消し」の要請を受けた
「それは腹案ではない」という言葉によってリアリティを与えられて
いなかったか。
それで結局のところぼくたちはその「マクガフィン」を「がっかり」と
交換したのだった。
がっかり。