『桜の森の満開の下』をよんだよ | 陽炎の帯の上へちらりと逆まに映る鴉の影―どーすかΩ

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こんばんはー。


今日は図書館で借りた坂口安吾全集の、

『桜の森の満開の下』を読みました。


感想?


うーん、そこそこ。


桜の物神性はむしろ森美のパロディの方が

(『新釈 走れメロス 他四篇』に同タイトルで収録)

優れて描かれていると思います。


ただ、ひとつ、オリジナルはラストシーンの

「壮絶なまでの静けさ」の描写がすごい。


いい?静けさの質感がここまで迫真的に書かれるのは

なかなかすごいと思う。

「うるさいーっ」って耳をふさぐのは誰でも経験があるから

伝えるのは簡単。

でも、静か過ぎて、「もうやめてくれ!!!」ってのはね、

知らない人は知らないもんだよ。


ちょっとだけ引用しとこうか。



「桜の森の満開の下の秘密は誰にも今も分りません。

あるいは「孤独」というものであったかも知れません。

なぜなら、男はもはや孤独を怖れる必要がなかったのです。

彼自らが孤独自体でありました。

彼は始めて四方を見廻しました。頭上に花がありました。

その下にひっそりと無限の虚空がみちていました。

ひそひそと花が降ります。それだけのことです。外には何の

秘密もないのでした。」

「ほど経て彼はただ一つのなまあたたかな何物かを感じました。

そしてそれが彼自身の胸の悲しみであることに気がつきました。

花と虚空の冴えた冷めたさにつつまれて、ほのあたたかいふくらみ

が、すこしずつ分りかけてくるのでした。」



君は桜の美しさを知ってるかな?