こつんこつん
みずたまがひとつぶ
しろからとびだしました
はやくはやくときがせくばかり
けれどじめんはとおいです
おちてるのかそれともういてるのかしらん
みずたまはめをぱちくりします
きょうはかさをわすれたんだ
もうすこしだけもってくれよ
おじさんがふあんそうにそらをみつめます
それをきいてみずたまはわらいころげます
あははおっかしいや
よしすぐにいってやるからまってろよ
みずたまはびゅんとじめんをめざします
おじさんのしせんがうでどけいとまどのあいだを
いったりきたりさんかいくりかえしたころ、
みずたまはいよいよじめんにちかづいてきます
さいしょに、みずたまはごちゃごちゃしたまちをみました
ひとびとはいそがしそうにあるいていきます
つぎに、みずたまはあかりがたくさんついた
まぶしいえきをみました
どうろのすみでまるくなっていたねこがかおをこすっています
さんばんめに、みずたまはあめをいまかいまかとまつ
きやはながたくさんしげったこうえんをみました
いけのこいがくちをぱくぱくさせています
よんばんめに、みずたまはこうえんのすぐそばのちいさな
にわがあるいえをみました
しろいあじさいのはなのとなりでかたつぶりがのそのそと
つのをだしています
おしまいに、みずたまはよくみがかれたぴかぴかしたくろい
かわぐつをみました
ぴちゃん!
みずたまがかわぐつにぶつかるのとどうじにげんかんの
とびらがひらきました
「ただいま」
さきほどのおじさんがよくとおるこえでいいました
「おかえりなさい」
エプロンをつけたきれいなおんなのひとがこたえます
どうやらここはおじさんのいえだったようです
ふたりはにこにこしながらげんかんにはいっていきました
とびらがしまったあと
みずたまはむつかしいかおをしながらこういいました
「むむむ。こんかいはひきわけってところかな」
あめがふりはじめました