雨の風景02 | 陽炎の帯の上へちらりと逆まに映る鴉の影―どーすかΩ

陽炎の帯の上へちらりと逆まに映る鴉の影―どーすかΩ

この部屋の中にいるヤツに会いたいのなら もっと、寿命をのばしてからおいで


こつんこつん


みずたまがひとつぶ

しろからとびだしました


はやくはやくときがせくばかり

けれどじめんはとおいです


おちてるのかそれともういてるのかしらん

みずたまはめをぱちくりします





きょうはかさをわすれたんだ

もうすこしだけもってくれよ


おじさんがふあんそうにそらをみつめます


それをきいてみずたまはわらいころげます


あははおっかしいや

よしすぐにいってやるからまってろよ


みずたまはびゅんとじめんをめざします




おじさんのしせんがうでどけいとまどのあいだを

いったりきたりさんかいくりかえしたころ、

みずたまはいよいよじめんにちかづいてきます




さいしょに、みずたまはごちゃごちゃしたまちをみました

ひとびとはいそがしそうにあるいていきます


つぎに、みずたまはあかりがたくさんついた

まぶしいえきをみました

どうろのすみでまるくなっていたねこがかおをこすっています


さんばんめに、みずたまはあめをいまかいまかとまつ

きやはながたくさんしげったこうえんをみました

いけのこいがくちをぱくぱくさせています


よんばんめに、みずたまはこうえんのすぐそばのちいさな

にわがあるいえをみました

しろいあじさいのはなのとなりでかたつぶりがのそのそと

つのをだしています


おしまいに、みずたまはよくみがかれたぴかぴかしたくろい

かわぐつをみました




ぴちゃん!




みずたまがかわぐつにぶつかるのとどうじにげんかんの

とびらがひらきました


「ただいま」

さきほどのおじさんがよくとおるこえでいいました


「おかえりなさい」

エプロンをつけたきれいなおんなのひとがこたえます


どうやらここはおじさんのいえだったようです

ふたりはにこにこしながらげんかんにはいっていきました





とびらがしまったあと

みずたまはむつかしいかおをしながらこういいました



「むむむ。こんかいはひきわけってところかな」



あめがふりはじめました