窓の外を眺める。
コンクリートの無風流な建物がすぐに迫っている。
空は雲に覆われて真っ白だった。
その白さは、お花畑で美しい花がじゅうたんのように
広がっているところとか朝カーテンを開くと一面の
雪景色に変わっていて、朝日が雪に跳ねて目に
差し込むからまぶしいやといったようなみずみずしい
ポジティブな白さとはまた違った。
決して悪い局面ではないはずなのだが
ふっと笑顔が消えて黙り込むような・・・
そんなかげりのようなものが辺りに沈んでいた。
雲は水滴と氷の粒が空中に浮かんでいるものらしい。
小学校の頃、図鑑で読んだことがある。
粒と粒がぶつかって電気が生まれ、集まった電気の塊は
やがて大きな光のうねりとなって一気に地上に放出される。
まばゆい閃光に少し遅れて、どごーんと地を震わす正に「神鳴り」
僕は雲の内部を思い浮かべる。
雲は遥か上空に浮いているのだから、ここから
歩いていくわけには行かないだろう。
飛行機で雲に突っ込んでしまったとする。
すると粒たちが飛行機に群がってがやがや喚き立てる。
「なんだこいつは」
「われわれのせいかつをおびやかしにきたんだ」
「ばけもんだ」
「わけのわからんものはゆるさん」
「こわいよぅ」
「ゆだんしていておそわれたらせかいをまもれない
はんのうをみるいみでもわれわれはこれをてきとみなしてこうげきを
しかけるほかにはないのだ
かなしいかなこれがせんそうだ」
粒はものすごい数で飛行機にぶつかってくる。
コツン、コツン。コツン!コツン・・・コツン?コツンwコツン~
人海戦術である。
僕は恐ろしくてふるえあがった。
きっとガリバーもこんな心持ちだったに相違ない。
髪の毛やひげを引っ張られているわけではないから
まだなんとか気を保っていられるが、コツンコツンと
あたるたびに電気が溜まっているのだと思うと
恐ろしくて仕方がない。
僕はやっとの思いで雲から抜け出した。
僕は粒たちに追い出されたわけだから腹が立ったが
彼らに少し同情もした。
彼らには彼らの世界があるのだ。
僕は好奇心から彼らの領域を荒らしてしまったことを
ちょっとだけ後悔した。
飛行機が着陸する。
僕は地面に降り立って安心した。
ふーっと息を吐き空を見上げる。
まだ雨は降り始めていない。
ごろごろ唸っているだけである。