清水です。

 

 

2月に発生したトルコ・シリア地震。

両国で死者約5万人超という甚大な被害が

発生しています。地震のニュースを知った時

「このタイミングで…」

と思いました。

 

というのも、発災の約2週間前に、毎年司会

として参加している「国際防災・人道支援

フォーラム2023」に、トルコと日本の友好協力

を促進する「土日基金(とにちききん)」の理事長

と副理事長が来られ

 

「トルコも日本と同じ地震大国。

阪神・淡路大震災からの復興の教訓はトルコ

でも生かされいる。特に、『防災甲子園』のよう

な防災教育に取り組んでいる」

と、今後の防災・減災について協調されていた

ばかりだったからです。

 

 

その「国際防災・人道支援フォーラム2023」

を主催する協議会は、トルコ・シリア地震の翌月、

被災地への支援を考える緊急会議をオンラインで

開催。一般視聴が可能だったため、私も県庁で聴

講していました。

 

 

 

この会議では、現地で救援活動を行う団体から

の報告として、地震発生の4日後から現地で

活動を行った

CODE(コード)海外災害援助市民センター

吉椿さんと発災の2日後から現地へ入った

JICA関西センター河野さんらが被災状況を

語りました。

 

 

 

どう援助するか。トルコの人たちの主体性を尊重。 

 

河野さんは

 

「夜はマイナスにまで下がる寒さと乾燥の
厳しい環境にあった。
建物の崩壊の様子に『現実か』と目を疑った」
 

 

吉椿さんは

 

「テントなどは不足。ブルーシートに避難さ

れている方もいて、そこにはお祈りの場所が

できていた。

多くのビル・マンションが倒壊している。

耐震基準こそ存在するものの、末端まで順守

されているのか…。

 

政府の支援がない地域の学校では、NGO団体

が捜索活動や炊き出しを行っている。

『支援』には、トルコ人の「主体性」「自負」

を尊重する必要がある」

 

と報告されました。

 

 

 

兵庫県として、

・トルコへの支援活動を行う民間団体等の活動費

の助成や

・見舞金と義援金の贈呈

・都市計画の専門家の現地派遣、
・1,500枚以上の毛布と飲料水の提供

(ひょうごトルコ友愛基金の枠組みを使った支援)

などが実施されたところです。

 

 

そして、本日の話は「ここから」と言っても

よいでしょう。

 

舞台は、新開地。

 

 

 

「エルトゥールル号」の創作落語。義援金が集まる。 

 

 

「東の浅草、西の新開地」と言われた

神戸随一の歓楽街・新開地に「再び演芸を

身近に楽しめる場を」と2018年にできた

神戸新開地 喜楽館

 

 

 

 

 

この喜楽館で3月、落語家桂春蝶さんが

創作落語「約束の海~エルトゥールル号物語」

というお話を披露され、会場で寄せられた

義援金が、おととい3日、県へ寄贈されるとい

うことで、撮影に行ってきました。

 

 

寄贈の場所は、喜楽館…ではなく、このブログ

でも頻出の兵庫津ミュージアム

 

 

 

寄贈の前に、「ひょうご県民寄席」として

三席の落語が披露されました。

 

一席目は、桂三ノ助さん。

 

 

有名な「寿限無、寿限無」の落語を。

 

 

お次が、月亭方正さん。

 

 

この日は、山崎方正さんの一面とは少し(?)

ちがう、プロの話術とお客さんとのコミュニ

ケーションに、いたく感動しました。

 

 

 

トリが、桂春蝶さん。

 

 

 

3月にも披露された創作落語

「約束の海~エルトゥールル号物語」をお話

されたのですが、ものすごい見ごたえでした。

 

ここは「聴きごたえ」という表現が適切かとは

思いますが、1890年の当時の暮らし、1985年

の戦火にさらされる中東の様子…数々のシーン

が、春蝶さんのち密な描写によってありありと

想像できたので「見ごたえ」がしっくりきます。

 

 

この「エルトゥールル号」の海難事故。

8年ほど前に『海難1890』というタイトルで

映画化もされました。

 

 

1890年の海難事故から、そこから95年の時を

経たイラン・イラク戦争下での奇跡の実話です。

 

 

春蝶さんの落語にも、主人公はちがえど、海難

事故とイラン・イラク戦争の2つの時間軸で語

られます。

 

ざっくりと流れを説明しますと、

 

~ 1980年 ~

・ヨーロッパとの不平等条約に苦しんでいたトルコ。

日本との平等条約締結の促進と、日本の皇族による

トルコ訪問に対する返礼等のため、使節団を乗せた

「エルトゥールル号」が1890年、日本へ。

 

・同船、横浜港を出港、帰国の途につく。

 

・同船、現 和歌山県串本町沖を航海中、台風

により座礁。587名が殉職、生存者、69名。

 

・大島島民が、生存者を助け、献身的な介護

を行う

 

・69名の生存者は神戸(和田岬あたり)で治療

を受けトルコへ帰還

 

 

~ 1985年 ~

・イラン・イラク戦争が続くなか、フセイン大統

領が「48時間後に、イランの上空を飛ぶ飛行機

を無差別に攻撃する」という声明を発表

 

・イランに滞在する自国民を救出するために

各国が救援機を出すなか、日本からの救援機の

派遣が見送られる

 

・トルコから駆けつけた救援機2機によって

日本人215名全員がイランを脱出

(無差別攻撃の開始まで2時間を切るという

ぎりぎりの脱出)

 

・後に「救援機は、エルトゥールル号の恩返し

だったこと」が判明する

 

 

という日本・トルコの友情が。

 

 

そして、エルトゥールル号と兵庫のつながり

(=神戸で療養)があり、そのかつての療養先

のすぐそばにあるのが、兵庫津ミュージアムと

いうことです。

 

 

 

春蝶さんの落語の後、義援金は兵庫県

神戸県民センターへ手渡されました。

 

 

 

 

トルコと日本の時を超えた友情があり、

トルコと兵庫のこれまでの災害時の支え合い

があり、それをありありとした情景と情感を

もって伝えてくれる芸能がある。

 

歴史と絆と芸。脈々と続く一方、無形であるがゆ

え、有形のものとして触れさせてくれるための場所

がこのミュージアム。

兵庫のはじまりを語るミュージアム。

長いものに一瞬触れたような気がしました。

 

 

義援金は土日基金を通じて、困窮大学生への
奨学金として活用されます。

 

 

 

兵庫県広報専門員