先日、一冊の本にめぐりあいました。

「ストーリー311」


ひょうごワイワイ  plus+ 

ひょうごワイワイ  plus+ 
(c)ひうらさとる/講談社


漫画で東日本大震災の「あの日」と
「あの日から」の物語を残したい。

そんな思いを胸に、
11人の漫画家が描いた11つの物語です。


「被災地にボランティアに行った友人が
語り部の皆さんの活動を知り、
“漫画で多くの人に知ってもらいたい”と

言われたことがきっかけでした」


このプロジェクトを呼びかけた兵庫県在住の
漫画家ひうらさとるさんは振り返ります。


「参加した漫画家さんたちも
震災から1年以上が過ぎ、何か漫画家だから

できることを探していたように思います」

 

そして11人の漫画家の皆さんが東北3県へ。

被災による悲しい出来事、厳しい生活の中で

生まれた家族や地域とのつながり。

被災を乗り越えて成長していく町の若者の姿。

日本各地から訪れるボランティアと

地元住民とのふれあい。

2011年3月11日以降に生まれた

さまざまなストーリーに出合うことになります。


ひうらさんが描かれた物語は、福島を舞台に
小学校教諭の若い女性が主人公。
3.11後の福島での日常が、

彼女の視点を通して描かれます。


「一番伝えたかったこと、それは福島に生きる

当時のごく普通の一人の女性の状況と気持ちです。

色々なことを抱えながら、選択したり覚悟したりして
懸命に日々を生きていた様子を伝えたいと思いました」

 

除染作業、校庭の線量計、

子どもたちのガラスバッジ―。

描かれている日常風景とともに、

登場人物が放つ言葉の端々に、

福島の現実が見え隠れします。

私が主人公と同世代ということもあり

読み終わった後、深く重い余韻が残りました。


そしてまたこの作品にはもうお一人、
兵庫県在住の漫画家ななじ眺さん

参加されています。


震災後すぐに仲間の漫画家さんに声をかけて

チャリティー漫画本 を出版されるなど

継続した東北の応援を続けられているななじさん。

「ストーリー311」の取材では、
小学校の卒業式直前に震災にあい、
福島県いわき市から姫路市に避難した
中学生とその家族の話が描かれます。

福島に残る人、福島を出る人
人はいろいろで 元々いろいろだったのを、
もっといろいろにしてしまったのがあの震災ー


文中に出てくるそんな言葉から

何が正解かわからない中で

一人ひとりが精一杯の選択をして

今を生きている様子が伝わってきました。


クローバー


8ページという限られた中でも
漫画という表現だからこそ可能になる
想像力を補い、広げてくれる伝達力。
改めてすごい!と感じます。

しかし、同時に、冒頭プロローグに語られるように

“描く”からこその覚悟や難しさがあった、

とひうらさんは言います。


「取材させてもらったことが描ききれなかったり、

どういう描き方にしたら傷つけないだろう  

伝わるのだろうとみんな迷いながらでした」


そんなふうに、一人の人として、

プロの表現者として、迷い、悩み、

揺れ動きながら感じたことや、

取材の中で描ききれなかった東北の姿が、

取材後記として物語の最後の半ページに

それぞれ綴られています。


大地に立ち、空気を吸い、風にふれ、

その地に生きる人たちと言葉を交わすからこそ

“伝える”難しさや苦しさが生まれ、

そんな気持ちを抱きしめながら

物語が描かれるからこそ、読み手は

深い共感を覚えるのではないでしょうか。



そして、震災発生から2年目となる

今年3月11日に刊行されました。


「小さな子どもたちが字が読めるようになったときに

 残せるものができてうれしいです」


と、ひうらさんは今の気持ちを言います。


いつか読めるように
部屋に置いておいて欲しい  

そして、いつか東北を訪れて欲しい―


漫画家さんたちの願いが

込められた「ストーリー311」

ぜひ、多くの方に読んでいただき、

東北を感じて欲しいと思います。


「ストーリー311」HPこちら    


ひょうごワイワイ  plus+ 
(印税・著作権料全額と利益は被災地復興のため寄付されます)



兵庫県広報専門員