真山仁「ロッキード」その3(本を読んでみてはいかがですか?Part136) | 兵庫県健康生きがいづくり協議会 ニュースと行事予定

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 第三部第九章「もう一つの疑惑」:丸紅ルートや全日空ルートの合計よりもはるかに多い21億円の児玉ルートは防衛庁の時期対潜哨戒機選定について国産機配備という日本政府の方針を履してロッキード社のPー3Cを押し込んだ事件だとされています。しかしその全容は明らかになっていません。この事件のジョーカーはニクソン大統領であり、日本を振り回し続けた人物である。そのニクソンのビッグスポンサーがロッキード社であり、ニクソンが1974年にウォーター・ゲート事件で辞任していなければロッキード事件は起きなかったとしています。ニクソンが大統領であれば、ロッキード社を保護したことは明らかであり、チャーチ委員会でのロッキード社への追求もなく、その資料が日本側に提供されることもなかったとも述べています。


 第十章「児玉誉士夫という生き方」:絶対無比の黒幕である児玉は1911年に福島県に生まれて、養子となって児玉姓を名乗って医学を学ぶも政治活動に傾倒し、「えらい人物」になることを目指したが、中国大陸わたって日中戦争において児玉機関として活躍してその時に得た財力で戦後の影響力を手に入れたと述べています。裏社会での決断と実行の男であり、独自の正義感をもって「日本のため」に活躍したが、ロッキード事件で角栄との糸が絡み合うのであるとしています。児玉がCIAの協力者であったことは定説であり、そしてCIAはロッキード社の工作を把握しており、米政府の秘密の外交目的を達成するために、その活動に相乗りした可能性もあるとしています。米国側は何としても対潜哨戒機Pー3Cを日本に買わせたかったのであると述べています。
 第十一章「対潜哨戒機」:米国は開発当初には日本には売らないとしていたP-3Cをロッキード社の経営危機を救済するために売り込みにかかったと記しています。国内では川重による純国産対潜哨戒機の開発が進んでいたが、それが米国の圧力もあって白紙撤回されてしまったのであるが、それは角栄ではなく、佐藤総理の時に決定されたと考える方が自然であるとしています。


 第十二章「白紙還元の謎」:防衛省が国産化を目指した機種は四機種あり、すでに研究開発を終えていた二機種については国産化がすすめられ、対潜哨戒機が白紙還元された経緯は性能面からなのか、費用面からなのか、政治がらみなのかは藪のなかだが、角栄は白紙還元の話を後藤田官房長官から報告をされて、対潜哨戒機ってどんな漢字を書くのだと訊ねているとしています。防衛省自体もメディアの産業界育成に資する国産化の推進の煽りを受けて、それにこたえるためのポーズをとっていた可能性が高いとしたうえで、しかし、自主防衛を強く主張していた男がいる。中曽根康弘であると述べています。


 第十三章「MOMIKESEと訴えた男」:101歳で永眠した中曽根は、角栄と同じ月に生まれている。確固たる哲学と思想を抱き、迷わずに突っ走るタイプで、総理になってから政治家として成果上げたのは突出しているとしています。中曽根が掲げたのは憲法改正と自主防衛であったが、防衛大臣に就任して総理の座を目指すには日米安保強硬派のままでは反米ととられる恐れがあることを意識し始めたと述べています。そして、中曽根は1953年にハーバード大の夏季セミナー以来キッシンジャーと親密な関係を続けたが、キシンジャーのメジャーの代理人としての顔を垣間見たときに、その怖さを知り、米国の怖さも知ったのであるとも述べています。中曽根の政治資金額は1972年から急に跳ね上がっているが、それは児玉からのルートである可能性が高く、児玉は中曽根を買っていたとしています。一方、ロッキード事件の発覚直後に当時の中曽根自民党幹事長が米政府にこの問題をもみ消すことを希望すると要請があったことを報告する公文書が米国で見つかっているとしたうえで、中曽根の暴かれて困る秘密とは何かと問いを投げかけています。


 第四部第十四章「角栄はなぜ葬られたのか」:冷静に考えて、証拠と法廷での証人の証言を重視して裁判を行えば角栄は有罪にはならなかったと思われるとして、角栄が葬られたのは、チャーチ委員会が開けたロッキードというパンドラの箱をキッシンジャーが守ろうとしたからであると結論付けています。資料を日本側に渡さざるをえなかなったキッシンジャーは前総理の名前を差し出せば自民党は操作を止める方向に動くと踏んだが、金脈問題で角栄を追い詰められなかった特捜部は捲土重来を期して角栄を追い詰めていった。戦後続いた米国との主従関係の中で、前総理の首を差し出した米国の思惑はメディアの騒動と特捜部によって瓦解してしまうのである。角栄を葬った怪物の正体は世論である。誰も世論には逆らえなかったのであるとしています。


 終章「残された疑惑」:児玉に流れたとされる工作資金21億円の行方はまったくわからない。児玉は金を受け取っていないのではなかろうか。渡された金はケイマン諸島を経てマネーロンダリングされて米国に還流してニクソン再選資金とされた可能性もあるとしています。そして、ロッキード事件で最後まで開けられなかった匣は佐藤栄作である。佐藤は過去に造船疑獄事件に連座し、法務大臣の指揮権発動で逮捕を免れている。佐藤の悲願であった沖縄返還のために、ニクソンから経営危機に陥ったロッキード社救済のために同社の製品を購入することを依頼され、それを後任の角栄に引き継いだ可能性は高いと結論付けています。

 

 この本は、あれだけ世間を騒がせたロッキード事件を冷静な目で見つめなおして記録した歴史上欠かせない一冊の本ではないでしょうか。

以上