2016年に出版された資産がなくても幸福な人、資産があっても不幸な人を分析した本です。著者は三浦展(あつし)氏。1982年に一橋大学を卒業後、パルコに入社し、1990年には三菱総研に転職し、1999年にカルチャースタディーズ研究所を設立し、消費社会、家族、若者、改装、都市などの研究を踏まえ、新しい時代を予測して、社会デザインを提案している。著書に「下流社会」「日本人はこれから何を買うのか?」「第四の消費」「あなたの住まいの見つけ方」「郊外・原発・家族」など多数。
お金はないが幸福な老人になる条件は何かを考えたのがこの本である。そのエッセンスをご紹介します。
シニアのうち資産が2000万円以上の層の67%が幸福で、500万未満では6割を切るが、200万円未満でも49%が幸福であると分析しています。
そして、シニアの年収は200万~300万が36.5%、300万~500万が34.4%で、平均は260万円。多くの階層であと100万あればと思っているといいます。
平均資産は2772万円だが、上位13%が全資産の55%を保有しており、500万~1000万が最も多くて15%、次が2000万~3000万で14%。300万円未満も21%いると分析しています。
そのうえで、不安や悩みに関してはシニア全体では、病気、行きたいところへの移動の制限、生活資金、災害、配偶者の介護と死別であり、3000万円以上の資産がある層は不安を感じていない人が不安を感じている人よりも多くなるといいます。
下流で不幸な老人は買いたいものが買えない人であり、上流で不幸な老人は寂しい人であると分析します。
幸せではないと思っている人の後悔は、貯金・資産不足と夫婦生活であり、この二つは幸せである人との回答の差が最も多いといい、幸せになれない最大要因であるとしています。
資産があっても幸福でないと回答する人の後悔は、恋愛、夫婦、子供といった家族面での後悔が多いといいます。
年収と幸福度の相関関係を見ると年収が高いほど幸福度は上がるが、600万円を超えると幸福度は伸び悩むのだそうです。
男性の未婚者は資産が多くても幸福度は低いが、女性の離別・死別者は資産があれば幸福度は高く、また、パラサイトシングルと同居するシニアの幸福度は低いのだそうです。
隣近所の知り合いの数が多いほど幸福度は上がるが、その人数は女性のほうが多いほど幸福度が上がってくるといいます。
シニア全体が幸せを感じるときは、好きなことをしている時、自分が健康だと感じる時、家族と楽しく話している時、孫の顔を見た時の順である。そして、女性は子供や友人、男性は異性が幸福の素であり、下流老人は健康と孫が、上流老人は家族団らんが幸福度を上げると分析しています。
そして、お金があって友人がいないより、お金がなくとも友人がいるほうが幸福である。下流で強欲な人が一番不幸で、幸福老人は自分ひとりの幸福ではなくみんなの幸福を考えるといっています。
さらに、多世代共生、多機能、参加型社会が幸福老人を増やすので、シェア型社会、スキルのシェア、「共食」「老若男女共学」によるコミュニティが求められているとしています。
日本人は良いことは国が税金でやるべきで、個人が投資する話ではないと思っている。そして、もう一回成長していこうと思うか思わないかの差は大きい。定年を迎えても長期投資を続け、健康で働き続け根べきであると著者と対談した藤野英人氏はいっています。老後の恐怖を煽るのではなく、投資は古民家リノベーションに似ていると考えて、上がったさがったに一喜一憂することなく、長い目で見ることが必要ともいっています。
結論としては、楽しそうな人とは好奇心が強くて、うろうろしている人間であり、なんでもポジティブに考えて、首を突っ込んでみる人であると分析しています。
あなたはどんな老人ですか、またどんな老人になりたいですか?
以上