彼女がその名を知らない鳥たち | Forlonger

彼女がその名を知らない鳥たち

沼田まほかる 著

“恋愛”ミステリーです。


15歳年上の野卑で下品な男、陣治(じんじ)と暮らす十和子(とわこ)は、8年前に別れた黒崎を忘れられず、陣治を激しく嫌悪しながらもずるずると自堕落な毎日を過ごしていた。
ある日、十和子は黒崎が5年前に失踪していたことを刑事から知らされ、陣治が黒崎を殺したのではないかと疑いを抱きはじめる――。


沼田まほかる氏の著書は、本作の他には「猫鳴り」しか既読ではないので、作品の印象を述べるのもおこがましい気はしますが。

徹底的、とか容赦のない、という表現がぴったりくる作者さんのような気がします。

「猫鳴り」でいえば、最初の物語で、まだほんの小さな(しかも弱っている)猫を、主人公が執拗に何度も捨てにいく場面であったり。

本作品では、陣治に対しての十和子の接し方や嫌悪の度合いが、半端ではなく酷いです。

小男でごま塩頭、飲み残しのコーヒーの中に吸い殻を捨てたり、水虫の足の皮をちまちま捲るクセがあり、汚い食べ方、真っ黒な爪、電話魔…

一貫して十和子の主観で進行する話のため、作品における主要人物であるはずの陣治が、それはもう徹底的に“醜い男”になっていて、仮に美男子しか出てこないような恋愛小説を好む読み手が本作を手に取ったら、おそらくかなり苦痛に感じるのではないだろうかと思います。


ただ、この徹底的なまでの表現が、読み進んでいくうちに、必要不可欠だったことに気づかされるのです。

話の展開そのものは、ミステリー好きならたいして意外ではないかもしれません。

ですが、たどりついた結末には、そこに至る過程が“徹底的”であるがゆえに、胸をつかれ、しばらくの間くらくらとしてしまいました。


大人の人はおそらく大概が泣けると思います。

泣かされる、に近いかもしれません。


“恋愛”ミステリー、です。


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