ひとかげ | Forlonger

ひとかげ

よしもとばなな・著

著者の既刊、『とかげ』のセルフリメイク版です。

児童専門の心のクリニックで働く『私』は、つきあっている女性『とかげ』に結婚を申し込むが、とかげは「秘密がある」と言う…。

この本ですが、一冊の中に、リメイク版の『ひとかげ』と、オリジナル作品の『とかげ』が順に収録されており、2作の変化点を明示した形式になっています。

忌憚のない意見をいえば、私はオリジナル作品『とかげ』のほうが好きです。

理由は、文体やトーンが一貫しているからです。

新作の『ひとかげ』は、よしもとさんが述べられているように、主人公ととかげの職業意識がオリジナルに比べてかなり高くなっているのですが、逆にそこをクローズアップしすぎて、作品の中で固い(=職業に関連する場面)部分と、よしもとさん独特のやわらかな雰囲気や文体が乱立してしまっていて、妙な分離感があるように思ってしまいました。

とはいえ、昔から好きな作品なので、こうして新しく手直しして刊行されるのはとても嬉しいことです。

とかげを思う「私」のやさしさ、お互いを尊重しあい、なにげないことを幸せに思う2人は、私の中でずっと憧れてやまないものです。