ダックスフントのワープ | Forlonger

ダックスフントのワープ

藤原伊織・著

短編集です。

表題作の『ダックスフントのワープ』とは、大学で心理学を専攻している主人公が、家庭教師をする小学生の少女に話して聞かせる物語のタイトルであり、いわゆる劇中劇と、その聞き手(少女)の心象・環境の変化を主人公の『僕』が追う、という構成になっています。

藤原伊織さんは『テロリストのパラソル』で有名な方ですが、後年はどちらかというとエンターテイメント的な傾向の作品が多くなった中で、繊細な心の機微を捉えた初期の短編であるこの作品は貴重だと思います。

また余談で申し訳ないのですが、私が通勤中に電車でこの話を読んでいたときのことです。
ラスト近くに少女がある言葉をある人へ向けて叫ぶシーンがあるのですが、それも舞台が『駅』ということもあって、朝からひとり号泣してしまいました。

『テロリストのパラソル』も大好きな作品なので、またしっかりと読み返してから感想を書きたいと思います。

藤原さんの作品で描かれる主人公の男性は、皆ひどく禁欲的で、どこか世界に対して距離を置いている人ばかりです。ただだからこそ、それぞれにお酒や仕事、剣道やボクシングなど、なにかひとつ徹底して執着するものがあります。
そうまでストイックな人物を描きだすというのは、きっと藤原さんの持つ『理想』がそこにあって、そして絶対に揺るがないからなのだろうと思います。

藤原さんは、本当に惜しいことに昨年お亡くなりになられました。
心より、ご冥福をお祈り申し上げます。