頬を丸太のようなもので叩かれ目が覚める。

「なんだ、君のか。」

象が心配そうに此方を見ていた。


-あまりに長いこと目を覚まさないので、心配しましたよ-


「僕はどれくらい寝ていた?」

-月の表情が一周するくらいです-



そう、僕は夢を見ていた。

何処も彼処も直線ばかりの世界の中で、
首に縄を巻いて、日がな一日座ってる夢だった。


「丁度、君の胴体を輪切りにした広さのところに、
ずっと座って、ずっと同じことを繰り返してる夢だよ。」


-それはまた夢の中でも難儀ですね、何故そんな繰り返しを?-


「さあ、他にする事がなかったんじゃないかな?」



ふと脇に目をやると、

草むらに、ガゼルの死体があった。

ぼんやりと霞掛かった目でそれを見ていると、
左前脚の付け根あたりが、盛り上がると、

そのほおずきみたいな怒張から、
たくさんのイナゴが吹き出てきた。

それは湧き水のようにあとからあとから、流れ出し、
碧の混じった、茶褐色の泥流みたいだった。


「なんで、あのガゼルは死んだんだろうね。」


-そりゃあなたが目を覚ましたからで、
もう少しで同じ目にあうところだったとおもいますよ?

控えめにいっても、かなりあなたがあのガゼルと同じ運命になるかどうかは、
紙一重でしたね-


何匹かが、群れを外れ僕の手のひらの上を通過していったので、

そのまま羽根をむしり、口に放り込んだ。


-ガゼルの味がしますか?-


「いいや、苦いだけだね。」

僕はその時、象の肉はどんな味がするのか想像したのだけど、

彼に尋ねる代わりに、
イナゴの頭を噛み潰した。




遠くの空に、巨大な岩の塊が見えた。

徐々に大きくなるそれは、

とてつもない音と、地響きを生んで、
すっぽりと遥か遠くの山に激突した。



「地響きと、君の尻尾、

どっちで起きるのが、幸せなんだろうね。」


象は、聴こえないフリをするだけだった。