もう、私がこの窓から校舎を眺めるようになって、
7回目の冬。
そして多分、世界が明日を産み続けるなら、
もうすこしで7回目の春。
時々残酷ねって、想う事がある。
明日が生まれ、昨日が折りたたまれていくのが歴史なら、
歴史の流れは、ヒトにはどうしようもないものだなって感じる事があるの。
何気ない日々の移り変わりは、
あまりにも微か過ぎて、
ヒトの目には、天気の差ぐらいしか見えず、
変わり逝く事実を、ヒトの中から忘れさせてしまう。
何時だって、変化が目に見える時には、
大抵手遅れだったりする。
涙を流しても、声を荒げても、
現実という大河の中に、コップ一杯の水を流し込んだとしても、
きっと何も変わらない事に、
いずれヒトはため息をつくだけになるのかしらね。
季節が一巡りするたびに、
校舎から子供達の姿が減っているのが判る。
会社を移ったあの当初は、
窓ガラスを震わす、あなたたちの声がわずらわしいと想う日もあった。
でも、今はもう殆ど聴こえない。
私ね、知らなかったの。
年老いて、所々にひび割れのある校舎。
それを寂しくみすぼらしく見せなかったのは、
子供達の声が、校舎に化粧を施していたからなのね。
冬の空気も、やはり残酷ね。
水気が抜けた空気は、細やかで乾いた校舎の肌を、
いやおうなく、私に伝えるもの。
もうすぐね、私もここを離れる。
それが何時なのかは判らない。
でも、そう遠くないうちに。
そして私は、遠い未来に、
或いは近い未来に知ることになるのかしら。
自分の母校よりも長く見たこの校舎が、
この世から消えてしまったことを。
もう、子供達の声が、
この冬の空気を暖かくしていた事実を、忘れてしまうのかしら。