うお~響いた~

じゃじゃ馬ISM炸裂~でも、いままでのISMとちょっと違うかも~!

というわけで、俺も書く。

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じゃーISM からの続き


もう、何処へも行かなくていい私は、

その日、目が覚めたときに、

身体を取り巻いていた、憂鬱な空気がすっかりなくなっていることに気がついた。


その代わりに、ベッドの敷布はこれでもかというくらい、

私の汗を吸っていたのだけど、まぁ、私の身代わりに、

風邪の菌をもらってくれたんじゃないだろうか。


お陰ですっきりとしている、ありがとう。


風邪なんて、いいことは一つもないけれど、

布団から出れるようになったときの、

久しぶりに肌が、外気に触れたときの戸惑いが好きだなと想う。


何週間かぶりに、出会えた恋人みたいな感じがする。


カーテンを開けるのと同時に、携帯が鳴った。


”伊原 織人 携帯”


「おはようOrion。

ねえ?もし君も風邪完治しているのなら、

二人で全快祝いをしないか?今夜なら、早く仕事終われそうなんだ。」


たった数日ぶりに聞く、俺人の声が、

私の耳の中をくすぐったとき、

涙がでそうになる自分を抑えるのに必死になった。


肌だけじゃなく、私自身も久しぶりに恋人に逢えそうだった。



脂ものはダメよと言っているのに、

織人は、天麩羅を食べたがった。


医者の貴方が好いというのなら、私にはそれを邪魔する事もできない。

私が邪魔できる男なら、私はきっと、ここまで堕ちはしなかった。


雪原に裸で立っているようなものだ。

織人が私に吹き込む風ならば、

私の乳首は、私の意志とは関係なく、堅く起立するし、

ただ、身を丸めることくらいしか、実際のところ、私には選択肢がないのだ。


そして私は、織人の前で、

身を丸める代わりに、強い女を演じる。

正確には、強い女で”在ろうとする”。


もっともそれが、織人への対価になっているのかどうかは、

私には判らない。

織人よりいくつかは若い、私の身体が対価なのかもしれない。



店の暖簾をくぐれば、

店主が人懐っこい笑顔で、私たちを迎えてくれる。


店主のそんな笑顔を引き出すのは、この男の魅力だと想う。

美味しいご飯を出す店の店主と、親しくなれるかは才能とステータスだ。


本当の料理を食べたいのなら、

店主と親しくなるのは、その初めの一歩だ。

だから、私は織人と食事をするのが好き。


美味しいものを食べさせたいと店主に思わせるのだから。

誰だって、ザリガニと、伊勢海老の違いが判らない男と食事はしたくない。

-もっとも、私はザリガニを食べた事がないし、伊勢海老より車海老が好きなのだけれど-


「今日は北海道で獲れた、子持ちじゃない本物のししゃもがあります。」


そして、それとは全く別次元のところで、

店主のそんな得意気な言葉に、

顔を輝かす織人が、好きなんだと想う。



食事は、全ての集大成だなと感じる事がある。

味付けに対する感性、気分と店の選び方、

そして、なにより食べ方と、会話の運び方。


織人は、私が抱かれてきた、どの男よりも洗練されていた。



大吟醸が、病み上がりの私の喉を滑り降りていくとき、

織人が、蓮根を噛み千切る姿が見えた。

本当に美味しそうに、それを嚥下するとき、

とてもいやらしく喉が動いた。


天麩羅を食べた後の、織人の精液はどんな味がするんだろう、

そこまで考えて、自分は将来淫乱なババアになるかもしれないと思い、

同時に、私にはそんな未来がないことを思い出して、ほっとした。



「ねえ、織人?

私が送ったメールは、ちゃんと届いたのよね?」


「うん?

うん、もちろんだよ、だからこうして君と天麩羅を食べている。」


「ごめんなさいね、あんなメールを送って。」


「何故?僕も君に逢いたかった、だからここにいる、

謝る必要は多分、どこにもないはずだけど?」



目の前で、海老の尻尾を食べる織人を見ていたら、

一つ疑問が沸いた。


「ねえ?あのメールを送ったとき、廻りに誰も居なかった?」


着信の履歴を観る織人。


「ああ、もしかしたら理沙が側にいたのかも、知れないね?

でも、あの人は僕の携帯を覗き見ることはない人だと想うけど。」


私は、自分の妻を、私の前で理沙と呼び捨てるこの男の無神経さに腹が立った。

さっきまで、私たちを覆っていた、調和した空気に、ぴしりとヒビが入る音さえ聴こえた。


そして、感情に任せて迂闊なメールを送った自分を呪うのだった。

妻を信じきるこの男を、初めて愚かな人間じゃないだろうかと疑いもした。



歯茎の裏側を、海老の殻が障った。


名前を知ることになった相手の女と、名前を知られた私の間に、

冷たく張られた形のない糸が結ばれてしまった、

何故かその時私は、そう感じたのだった。