-歪んだ三角形-  からの続き



走り去るミカの背中を見ながら、ため息が出た。

ツイてねえ。


俺も必死だったのに、ミカの柔らかさと香りがこの腕の中にあったのに。


やってらんね。


「まて、相澤どこへ行く?」


「やってらんねーから、俺早退します。」


「ふざけるなっ。」


なんだ?さっきから様子変だけど、と振り返った先で、

藤木はこれでもかってくらい、顔赤くして怒ってる。


ちっ、やっぱそうなのか?


「ふざけてねーっすよ、気分悪いんで帰ります。」


って、そこで肩掴むなよ、藤木っ!


「席に戻れっ!」


嫌だって言ってんだろ!?

なに鼻の穴広げて怒ってんだよ?」



言い終わる前に、右ほほが熱くなった。

んで、その後に痛み。


ぶん殴られたって気がつく前に、俺のもしかしては、確信になった。


「あんたらはさ、いっつもそうだよな。


中身なんて、実は俺らと大して違わないくせにっ、

余裕ぶって、余裕なくなりゃ上から押し付けて。


そりゃ、いいだろうよ、相手が女ならさ?その余裕がかっこよく見えんだろうよ!?


んで、相手が男なら、こうやってぶん殴るんだもんな!?

何が、大人だ!何が、教師だ!ふざけんな!!」



ほんときったねえ、同じ箇所もう一回殴ってきやがった。

スローモーションに吹っ飛ぶ間、

そうなのか?ってミカの肩に手を置いた藤木と、その時のミカの表情が目に浮かぶ。


ほほを擦りながら立ち上がる、血でてんじゃねえか。


「気がすんだんなら帰りますわ。センセイ。」


つか、殴るか!?2発も!?


「お前は、雨宮にふさわしくない!」


「じゃー誰なら、ふさわしんですか、センセイっ!」



やってられっか。


藤木が後ろで怒鳴ってたけど、

ほっぺたの痛さより、今は別のとこが痛てえ。


殴り返す気も起きないぐらいい落ち込んでんだよ、こっちは。

大体、殴り返したら負け犬っぽさ10割増しだろ?!


まあ、それでも口だけ動いた俺は…俺は何だってんだ、くっそ。




校門まで堂々と、校庭を突っ切って、

やっぱりやり切れなくて、脇のコンクリート壁に一発くれてやった。


ほらみろ、痛てえじゃねえか。


胸と腹の中に、

どうしようもないミミズみたいな、クモみたいのが這い回ってるみたいで、

気持ち悪くてしかたねえ。


どうしてやろうか考えるのに、頭のなかにもフナムシみたいのが動いてる。



「ハル。」


突然、ミカの声が後ろからした。

振り返って、しまったどうせなら左から振り返ればよかった。


「どうしたのその顔。」


「階段から落っこちました。」

棒読みだよ。



「あの、ハル。ごめん、私ね…。」


「いいよ。」


「え?」


「何も言わんでいい、


ってああ!さっきの返事とか続きなら喜んで。」


神妙な顔してたミカが吹き出す。


俺もちょっと笑うけど、顔が引きつってたかも。


「後だしじゃんけんしてんだからな、俺が勝つに決まってるし。」



「そう、なんだ?」


「そうなんだよ。」



「そうか。」



あーもー、また時間だけ過ぎていくのな。


「ミカ。」


「ん?」


「あのさ、俺は、お前が好きだって判った。」


「ん。」


「だから、付き合いたいとか、抱きしめたいとか、そんなことを考える前に、な?」


「ん。」


ただ、伝えたかった。

俺は、今この瞬間、ミカが好きなんですよー!って。


ほんとは、勝ち負けとか、考えてねえ。」



「うん。」

さすがだ女の子。ここで笑えるんだ。

やっぱ、藤木の野郎より、俺より、ミカこそ大人だ。


いや、ワル?




「なんかあるときは、電話かメールくれよ、呼び出しあれば、何時でも何処でも行くから。


今日は、帰るわ…。」


ミカに背を向けて歩き出す。


もうだめ、いっぱいいっぱい、俺が歯磨き粉なら、

もうチューブをぎりぎりまで絞られて、これ以上なにもでませんって感じ。



4歩目が地面につくより前に、

俺の右手にミカの手が重なった。


驚いて振り向いた(また、右からな)ほほに、ふわりとミカの唇が触れた。

そよ風みたいなものだったけど。


多分、それは間違いなく、

人生で初めて触れたオンナノコの唇だったんだと思う。



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すいません、劣勢覆すために、無茶しました。

藤木嫌いなんです、HALもHydeも。

勢いでやりました、今は後悔してません。