考えてみればさ、 電話口で、「今日の俺はすげえ機嫌悪いから。」
こんなこと言うのは、お前に対してだけなんだろうな。
少し前までは、それが甘えだと思ってた。
もうずっと前、ただ初めて会ったお前の唇をみて、
ああ、キスしたい唇だって、生まれてはじめての感覚に囚われてから、
ほんとに長い時間が経ったよな。
そして、生まれて初めて、会ったその日に唇に触れるなんて、
離れ業をしたあの日から、
結局ずっと、中途半端だったのかな。
彼氏が居たお前、ずっと好きだった人間と終わった俺。
多分、始まりに理由なんてないのは、どの恋も一緒だけど。
彼氏がいようといまいと、ただ目の間にお前がいるだけで満足できた日々。
もちろんそれは、長くは続かなかったけども、
彼女は、俺のもん。
俺は彼女のもん、なんて価値観だった俺が、
いつしか、そうじゃなくなったのは、
誰に対してでも、自分のものって思わないようになったのは、
そんなお前との恋愛がきっかけだったんだろうと思う。
お陰で生きていくのが楽になった。
何時も何時も、届くかもわからないのに、
それがどこにあるのかも判らないのに、
ただ、それを手に入れるには、自分を細く細く鍛え上げて、
ほんの1cmでもいい、高いとこに自分を伸ばすようにしか生きれなかった俺を、
そんなことしなくてもいいんだよと、
ありのままを受け入れてくれたお前。
そんな心地よかった関係から、
自分がはみ出してしまったのは、なんでなんだろうな。
今となっては、俺にはもう判らない。
お前が必要なのかどうかも、俺には判らない。
ただ、明らかに、他の人にするのとは、違う勝手さで、
お前にだけは接する自分がいて、
他の人には絶対にイラっとしない言葉も、お前の口から出ると怒りになるわけで。
そのブラックボックスにどんな名前をつけていいのか。
10年近く経った今でも、答えはでないよ。
あんな電話のあとで、どんな顔しようって、
いつも考えるのにさ、
いつだって、お前に会ってしまえば、俺は迷うことなく俺になるんだよね。
どうしてそうなのか。
あと何年かしたら、それに気がつくんだろうか。