きっと僕に願いがあった頃。


目の前に、悪魔が現れたのならば、

僕はなんでも差し出していたのだと想う。


それが、僕に属するものならば、

命だろうと、例えばこの両目だろうとも。

差し出していたに違いない。


それが、叶うのなら未来だってきっと売り渡していたと想う。


あの時、それが叶わない人生に、意味なんてないと想っていたから。



でも、

神さまも悪魔も、僕の前には現れなかったから、


ひたすらに生きた。

できることを一生懸命やって、

辛いときも笑って、

怒り出したいときも、堪えて、

明日の先に続く、明日のために必死に頑張った。


でも、本当は判っていた。


僕の願いは叶わないコトだって。


それでも、諦めたら何もかもが終わりだったから。


強く願うことで、その願いを実現させようと、

想いをカタチに変える努力をすること、


それだけが奇跡を起こすための鍵だって知っていたから。


強い願いには、相応の見返りが必要で、

自分が心と頭に描く風景を、他人に見せることができなければ、

それは叶わない。


そして、願いは叶わなかった。



それでも、今の僕は知っている。


何かを断つことで得られるものなんて、ない。


今の人生から、何かを切り取ることで得られるものがあるとして、

それはきっと不自然なものでしかない。


隠した秘密は、相手が大事であれば大事であるほど、

それを隠し通すことは難しいし、


抱えた覚悟は、大きければ大きいほど、

自分を食い尽くすものだって。


それでも、全てのものを背負って歩けるヒトがいる。



今の僕には、よこしまな願いだけはある。

自分の中にある負の感情が噴出す願い。

醜い願い。


でも、いつか、もうちょっとだけ旅路が遠くまで伸びたとき。


神様や悪魔が目の前に現れたときに、


「僕には人に頼るような願いなんて、ありません。」

そう笑って言える様になっていたい。





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