かづさんから頂いた宿題の続きです。

前回は此方


お題は、「朝起きたら、夜だった。」で始まる文章を書く。


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「こんなところで何をしてるの?」


体育座りのまま、首だけ後ろに伸ばした先に、女の子が居た。


多分、20代前半。

やけに整った顔立ちには、硬い表情が浮かんでいた。


無理な姿勢がたたり、そのまま仰向けに倒れる俺。


「いやね、この深夜の空には、何色が似合うのかなあって想ってさ?」

照れながら答えた俺に、軽く罵声が飛んできた。


「おじさんいやらしいよっ!」


おじさんね、まあ、おじさんかも。


「いや、でも助かったよ。」


「何が助かったのよ?」

と、まだ少しむくれ気味にその子がいう。


「世界に自分ひとりじゃないって判ったからさ。」


「おじさんヘンなヒトだね。」


「よく言われるさ。」



少しだけ、伸び上がって、そのこの方に右手を差し出す。


「今度は何?」


「ん?親愛のシルシだよ。」


「いつから、親愛な関係になったのよ。」


「多分、14秒くらい前かなあ?」


「ますますヘンなひとねえ。」


笑った顔はとてつもなく、可愛かった。

少しだけ笑顔がひきつってることに、僕はまだ気がつかなかったけども。



「俺は、まあ、道に迷ったようなもんさ、

そんで、誰も居ないからさてどうしようかなあって交差点で立ち往生してたわけ。」


「立ち往生って大声で歌うことなの?」


「ん?ああ、聞いてた?上手かったでしょ?」


「聞いてるコッチが恥ずかしかったよ。」


「あら、そんなに褒められると照れるねえ。」


「全然褒めてないから。

私はね、んっと、探し物…かな?」


「お、なら手伝おうか?」


「手伝ってくれるんだ?」


「いいよ、もちろん、やっと出会えた人間だもんな、何を探してるの?」


「んとね、秘密なの。」


少しだけ、悩んでその子はそう言った。

泳ぐ視線の先にさえ、何があるのか判らない。


それでも、俺はこの出会いに感謝していた。

誰も居ない夜に、誰かに出会えたことに感謝していたのか。

それとも、可愛い子がいて、一緒にいる理由ができたことに感謝しているのか。


それは、やっぱり、ずっと先まで判らない。

ビーカーに入ってる水に、ファンタをおもいっきりたらした時にさ、

それがもう水かファンタかなんて誰にも判らないのと一緒。


ともかく俺は、こんな風にして少しだけペースを取り戻した。



「そっか、ならその秘密を解き明かす旅にでも出ますか。」


「あ、いいねそれ。なんかいいよ。」


「旅の始まりは何をする?」


「そうねえ、やっぱり交差点の真ん中で大声で歌うことじゃない?」


真顔で言うからさ、驚きより何より、

そっか歌わなきゃいけないんだなんて、思い込んじゃってさ。


「一番歌います!」


when i wish upon a starを歌ったね、英語でさ。


これ、俺の大好きな曲。

よっしゃ、これで掴んだかな?!なんて振り返ってみれば、

きょとんとした顔でその子が見てた。


「それは歌なの?」


「え、ええっと星に願いをって曲だよ?」


「知らない、それと日本語じゃない。」


「すいませんねえ。」

と、少しなみだ目の俺。


「さって、歌も歌い終えたところで、キミはなんていう名前なの?」


「名前。」


「そう、名前。」


「ねえ?ここにさあ、私とあなたしかいないのなら、

名前なんてワザワザつける必要なんて、なくない?」


「そりゃ、そうだね。

うん、最近の若い子は、時として真実に近いねえ。」


「なにそれ、じゃあ旅の始まりは次なにするわけ。」


「んじゃ、ドライブでも行きますか、えっと…自転車で。」


「あはは、なぁにそれ、おじさんはヘンだよ。」



別に、俺は、ほんとうは面白い人間なんかじゃなかった。

でも、その日、というか『2:52』でと止まった日。

なんとなく、キミを笑わせてあげたかったんだ。


まあ、それが自分の為なのか、誰も居ないこの夜の世界にキミが居てくれたことへのお礼だったのか。

これもやっぱり俺には判らないわけで。



こうやって、俺はこの子と出合った。

名前も知らない、この子と過ごす夜の世界の最初の1日だった。



あ、やべえ、続いたりするかも。


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コメント:ながっ