リレー小説 『アメゾラ』 第13話 Side:H-5
時々想うのはさ。
神様なんて居ないねってこと。
例えば、本当に大事に想う人がいて、いつも大事だと想ってても、
それが通じるには運が必要だなって想う。
ミキは黙っていたよ。
葉月から受け取った傘を手の中で弄くりながら俯いていた。
「せめて最初の時は、晴れてて欲しかったんだけどね。」
狭いエントランスの空気が、重くのしかかってくる。
焦りに似た気持ちが、僕の口を無理に開かせれば、
それはやっぱり、恨みがましい口調になってしまうのは、人の性なのか、
僕が馬鹿だからなのか。
「せめて、最初の時は、君と二人で会いたかったんだ。」
キッっとこちらを見据えて、ミキが言った。
「なら何故、セイの腰を抱いてたの?」
消え入りそうな声で、もう一言。
「帰って欲しくなかったのに、なんで…。」
無言でエントランスから出て、空を見上げる。
「アメがひどくなる前に、買い物…さ、一緒に行かない?」
そのときの僕は、知らなかったんだ。
ミキがほんとはどんな子か。
だから、このとき、ミキを納得させる言葉をただ言うだけで。
言い訳をすることを良しとしない自分の性格をほんの30秒忘れることができれば。
僕らが駆け抜けなければいけなかった距離を随分縮めることができたはずだったんだ。
でも、ネットで架空の出会いをした僕が、本当の意味で出会ったのは。
あの部屋でもなく、他の女性の腰に手を廻していたあの瞬間が初めて。
現実の出会いとしては多分最低だったんだと想う。
自分の中で、判っていたのは、
こんな形でしか出会えなかった現実を悔しく想っていた。
2人ではなく、4人で。
しかも僕以外の3人が、皆顔見知りで。
本当はそんな事を気にせずに、いつも自分が振舞うように、
余裕を持った会話をしながら、徐々に葉月とクロスと仲良くして、
既に、ネットとしては充分に仲良くなっていたミキと現実の距離を縮めていけばよかったはずなのに。
僕は間違いを犯した。
心の準備ができないままに、4人で会うことを承諾したことも。
やりきれないキモチを抑えきれずに、
ミキに嫌がらせをするように、葉月との距離を縮めた事。
クロスのミキに向ける視線を理解していながら、それを無視した事。
或いは、ここで今ミキさえ降りて来なかったら、最悪な事態は回避できたかもしれないのに。
でも、最悪なのは、きっと僕だ。
最低な僕と、哀しんでいる女の子が、
それでも会話を進めていけるのだから、大人になるというのは、罪深いことだなと想う。
二人とも、お互いが大事な部分を見せずに他愛ない話をしてるのを判っているのに。
たった300m先にあるコンビニの光りまでの距離が、
もっと遠くにあって欲しかったのか、近くにあって欲しかったのか、
そんなことすら判らずに、口から言葉だけが零れ落ちる。
「クロスの料理意外に美味しかったよねえ。」
-嘘だ、味なんてちっともしなかったのに-
「そうだよねぇ、きっといい旦那様になるよね。」
-何故、セイの腰に手を廻していたの?アナタはそういう男?-
アメは、僕らの間にあった儚い繋がりの上に降っていた。
きっと紙よりもろい材質に、水性ペンで書かれていた僕らの関係は、
そのたった300mの距離の間に流れていってしまいそうだった。
もう読み取れなくなりそうな関係、きっとコンビニで買い物するまでに、
新しい文字を書けなければ、きっと僕らが会うことはもうない。
会計を済ませ、出口を抜けて、
ミキと離れる最後の三叉路で、僕の口から出てきた言葉は、
今の気持ちと同じく惨めなものでしかなかった。
「これからさ?どうするの?」
にっこり笑いながら聞いたのは、僕の最後の虚勢。
「そうね、クロスとデートでもするんじゃない、私が誘ってさ。」
少しふてくされてミキが言ったのは、彼女の最後の優しさ。
頭が動くより早く、身体が動いていた。
両手に荷物を持ったミキを、強く抱きしめた。
ほんの1秒だけ、驚いた瞳を見つめて、
多分、その日一番の優しさと荒々しさでミキの唇に触れていた。
僕の唇で。
耳元で、
「それは嫌だよ。」
そう呟いた僕は、腕の力を緩めることはしなかった。
そこから、ミキが荷物を取り落とすのか、僕を突き飛ばすのか。
結果が出るまでに、世界にどれだけの雨粒が降ったのか、
数えられるくらい、気の遠くなるほどの時間が流れたんだ。
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と、ここまでデス。
今回は、本来書き手になるはずだったクロスロードさんが1パスということだったので、
Hydeが美味しく頂いております。
なかなかにリレー小説難しいですねえ、
いくつか張ってた伏線も見事に、使えなくなり、
このままではHyde君は最低路線にまっしぐらなんでしょうか!
まあ、ご本人に続き書いてもらいましょうね、
そんなわけで、次は
『純粋』とかいて、苺と読む、mikiちゃんの出番になります~
お楽しみに~!