最近、ずっと埃をかぶっていたIpodを持ち歩くの。


僕の世界に再び、音楽が鳴っていることに気がついたから。


同じ型のipod。

貴女に会うたびに、僕のを君へ、君のを僕へ。

データの交換は、貴女がしてくれたね。


もうそんな交換をしなくなったipodを手に取ったとき。


そのipodが、僕の知らない貴女と過ごしていた数時間を知ることになったの。



ipodから貴女の香りがした。

胸に吸い込むだけで、涙がでそうになる、貴女の香り。


いつだって、僕の何かを引きずり出すのは、嗅覚。


例えば、貴女の声よりも、

例えば、貴女の肌よりも、


時として、貴女の匂いは、僕を深いところに引きずっていく。


深い海の底から、優しく身体を抱きとめられて、

あたたかい海の底に、落ちていく物語。


それは一瞬で、それは永遠で。


いつだって、僕が胸に掛けた鍵をふいにこじ開けるのは、嗅覚。



満員電車で、ずっと握っていたipodから、

僕の手へ。


貴女の香りが移る。


間接的な接触で、もう手の中に居ない貴女の香りが僕に移る。


時間と、媒体を越えた、貴女との接触。



貴女が僕を縛った鎖は、いつしか貴女の知らないところで僕を縛る。

幾重にも、幾重にも。


引越ししてから、わざと洗わずに居たパーカー。


貴女を最後に抱きしめた服。


結局、何時までも目に付くところにおいてあるマフラー。


世界で一番嬉しい贈り物。




気がつけば、世界は貴女で今も溢れていた。



Perfume of love....


君の名は....