仕事でぐったりして帰宅。
リビングには結構おおきな黒いソファセットがある。
誰も居ない家の中で、物音一つしない夜。
ワイシャツのボタンを外し、椅子に腰掛ける俺。
煙草の煙が部屋に舞う姿が、その日の気持ちを教えてくれる。
どこに向かってるのか判らない煙は、きっと今の俺。
3分くらい、半灯になってる電灯を見ながら、視線を感じて振り返ったら。
そのでっかいソファに、御当主が悠々と、座ってた、
手すりに顎を乗せ、なんか動物園の動物をみるように、目を輝かせてさあ。
「オマエなあ…、居るなら居るで教えろよ。」
あくびするスコット君。
そのくせ、ソファから面倒くさそうに飛び降りて、こっちにやってくる。
なんだ?待ってたのか?それとも気を使ってるのか?
嬉々として、玩具を咥えて俺んとこにやってくる。
「遊んで欲しかっただけか?」
くぅわぁん。
こいつは、まだちゃんと吠えない。
なんか時々人間の声みたいな喋り方でしか俺に吠えない。
ほんとに犬なのか?
毛皮をもみくちゃにしてやる。
考えてみれば、今誰かの身体に触るって、
コイツだけなのかも。
スキンシップの大好きな俺。
好きな彼女が隣に居れば、いつもどこかを触ってる。
呆れ顔で、ほんとにアナタは何時も私のどこかを触ってるよねって。
そりゃ、仕方ないよ、君の肌より気持ちいいモノがあるなら
是非教えてくれ、それを抱いて眠るから、独りの夜は。
口でなんといっても、どんな文章を書いたって、
なんのかんので、この体温のあるカタマリに俺は心惹かれてる。
斜に構えたって、いつも誰かに構って欲しいのは俺。
寂しいと想うのは俺。
きっとスコットじゃない。
いたずら好きな年頃になったんだろうね、家中のありとあらゆるものを齧りたおしてる。
週末になれば、誰より早くおき出して、フローリングをかちゃかちゃ爪音たてて全力疾走して、
たたき起こしてくれるし。
子供の居ない俺に、オマエはケタタマシイ喧騒とともに、
寂しさを忘れさせてくれるよ。
大事なモノを思い出させてくれるよ。
人間らしい怒りと、そして、旅行に出ればその腹を触りたいという欲求と共に。
一日だけオマエが喋れるようになったら、
世界がどんなところなのか、教えてくれないか?