何時もの時間、何時ものホテル。


何時からだろうね、ここに君と来るようになったのは。


本当の生活の中には、僕がいてはいけない君。

そんな君と、僕が、二人っきりになれる空間。


ここは何処へも繋がっていない部屋。


だから、或る日僕は君に言った。


「今日はさ、明かりを消すね。

ただ、君の肌から何が伝わってくるのか知りたいんだ。」


「今まで、一回も電気なんて消したこと無いじゃない。」


おかしいこというよね、何時も電気を消してくれとせがんだ君。

もちろん消すわけなんて無いさ。


僕は君の身体が大好きなんだもの。

わざわざ明かりを消してその美しい曲面を、楽しむ機会を減らしてどうするの?


僕は、君の恋人じゃない、旦那でもない。

いつ逢えるか判らない今だからこそ、

得られるものは、君の髪の毛一筋だって逃したくないもの。


でも、今日はね。

この前、暗がりで怖がってる君を見て、僕の腕にありえないくらい強く、

自分の腕を絡ませてきた君を見て、

明かりを消したら、普段多くを語らない君が何時もとは違う何かを僕に伝える気がしたんだ。


「全部電気消したら怖いよ。」

少し声を震わせながら君。


「なら、部屋の隅にキャンドルを灯すよ。」

にっこりと笑う僕。


 

僕はね、一つだけ間違いに気がついた。

白く、蒼い、光の下で君を見逃すまいと凝視することが、貪欲に君を求めることだと想っていたけど。

 

橙色のろうそくの明かりで、ぼんやりと照らされる君も、とても美しかった。

ゆらめく視界の中で、君の美しさは世界で一番だと想った。

 

曖昧さは、きっとつまらない現実を忘れさせ、

もう10年以上見続けた君の裸身が、今も変わらず自分の胸を打つことを知った。

 

「ねえ?知ってる?僕は君の裸をね、とても好きなんだよ。」


「もうっ…。」


消え入りそうな君の声。

君はさ、外見からはとっても想像できないくらい、恥ずかしがり屋、そして怖がり。


思えば、沢山のことを君は怖がっているよね。


或いは、僕とのことも、”怖い”ことなのかもしれない。



たゆたう炎の輪郭に包まれた君に近づく。

とても不思議、それは海の中ではなく、炎の色の中に浮かび上がる君の裸身に。


息が触れる距離で、じっと君を見つめる。

上から下に、下から上に、とても時間を掛けてね。


心の中でつぶやくよ


-ねえ?恥ずかしい?-


しゃがみこみそうになる君の腰をしっかり抑える。


「逃がさないよ、どこにも。」


君が口を開くより早く、君の陰りに手を滑り込ませる。

その雫を、君が見てる目の前で舐め取って見せる。


ふふ、きっと今までのどの時よりも、君の頬が染まってることだろう、

大丈夫、この薄明かりでは確認できないからさ。


君の身体が火照っているのは、きっとキャンドルの熱の所為なんだろうね。



僕は、何時もと違い、この日は君の身体に優しくなんてしなかった、

立ったまま、君の中に深く進入した。


きっと君は混乱してるだろうね。


初めての挿入。

初めての薄明かり。


でも、君の身体は、いつもより反応してる。

それでいい、だってそれを期待したんだもの。


跳ね上がる君の身体を抑えながら、

君が何度も意識を飛ばしかけたのを知っている。

君がいつもより強く僕の腕を掴んでいたことを知っている。


ありがとうね、これで今日君が僕から離れても、

数日の間、この傷痕と痛みが、君を覚えていさせてくれる。



僕が達しそうになる前に、君の身体を離し、少しだけ君の瞳に映る色を楽しんでから、

くちづける。僕の全てを乗せて。



驚く君の前で、ろうそくの明かりを吹き消したよ。



目を閉じた時の闇と、光が全く無い闇は、別のもの。

 


何も見えないこの世界で、君との間に細い線が結ばれてる気がした。

それは儚いもの、でもずっとあり続けたもの。

 

此処からは2人だけの世界。


そこで僕らがどんな物語を紡いだかは、僕らだけの物語。

 

2時間だけの奇跡のおはなし。





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