証文の内容を読み、シャイロックの訴えの正当性を確認したポーシャは、アントニオーに慈悲をかけて3倍の金を受け取ることを再度シャイロックに勧めます。しかしシャイロックは飽くまでも証文通りの判決を求めて譲りません。それで仕方なくアントニオーにシャツを開けて胸を晒すよう命じます。

 

第四幕第一場

Shylock.  Ay, his breast:

      そう、その胸だ

      So says the bond: doth it not, noble judge?

      そう証文に書いてある。そうですよね、高潔な裁判官殿、

     'Nearest his heart:' those are the very words.

     正に「心臓すれすれに」という言葉で。

Portia.     It is so. Are there balance here to weigh

      その通りだ。肉を量るための天秤ばかりは

      The flesh?

      あるか。

Shylock.   I have them ready.

      持っております。

Portia.    Have by some surgeon, Shylock, on your charge,

      外科医を呼んでおけ、シャイロック、費用はお前持ちでな、

      To stop his wounds, lest he do bleed to death.

      傷口の手当てのためにな、さもないと出血死するぞ。

Shylock.   Is it so nominated in the bond?

      それは証文に載っておりますかい。

Portia.    It is not so express'd: but what of that?

      書いてはない、だったらどうだと言うのだ。

      'Twere good you do so much for charity.

      それぐらいの情けがあってもよかろうが。

Shylock.  I cannot find it; 'tis not in the bond.

      その文句は見つかりませんなあ、証文に載っておりません。

 

 シャイロックはやたらと証文に載っているかどうかを根拠にして、載っていないことは受け入れようとしません。ちょっとムカつきますが、ダブルスタンダードではないので、主張は正しいと認めざるを得ませんね。

 

  我が国の場合はどうでしょうか。五輪貴族が銀ブラをしても、「不要不急であるかは、しっかりとご本人が判断すべきものだと思う」と言い、五輪担当大臣は問題ないと見做しました。

  しかし我々がお盆に帰郷し墓参りするのは認められませんでした。何故ならば、我々は一般国民ではなく、実は奴隷と見做されているから、自分で判断することが許されないのだとその時分かりました。

 そうでなければ、国を跨いでの行事であるパラリンピックには、安心安全だし教育的効果が高いからという理由で児童生徒の観戦を勧める一方で、感染拡大の恐れのある修学旅行は取り止めか延期にしろ、と緑のリーダー様がゴリ押しできる理由が理解できません。

 「お前たち、いい加減理解しないか。奴隷であるお前たちには、自由に行動できる権利なんてないのだ。だから私の命令を黙って聞く以外の選択肢はないのだ。私に文句がある奴は排除するぞ」と緑のリーダー様は笑顔でおっしゃっておられる訳です。

  なんだか嫌な奴だけど、決して基準がずれないシャイロックの方が、こっそりゴールをずらすのが得意な政治屋や日本医〇会会長よりも、遥かに立派な人に思えてきますね。