アントニオーの使者が来て、ソレイニオーとサラリーノーのふたりと共に去ったところにシャイロックの友人のテュバルが来ます。そこでシャイロックが駆け落ちした娘の居所が分かったか尋ねます。しかし娘の所在は分からぬままです。それでシャイロックが文句を垂れ始めます。

 

第三幕第一場

Why, there, there, there, there! a diamond gone,

おい、おい、おい、おい、ダイヤモンドがなくなったんだぞ、

cost me two thousand ducats in Frankfort! The curse

フランクフルトで2千ダッカットもしたやつが。今まで

never fell upon our nation till now; I never felt it

我が民族に降りかかったことのない呪いだ。今まで

till now: two thousand ducats in that; and other

儂が感じたことがない呪いだ。2千ダッカットのと、他の

precious, precious jewels. I would my daughter

貴重な、貴重な宝石がなくなるなんて。娘は儂の

were dead at my foot, and the jewels in her ear!

足元でくたばりやがれ、その宝石を耳に飾ってな。

would she were hearsed at my foot, and the ducats in

霊柩車に乗ればいいんだ、金と一緒に棺に

her coffin!

入れられてな。

 

   娘のことが心配なのではなく、持ち逃げされた宝石のことが心配だったのですね。これほど己の欲望に素直だと、私には却って清々しく感じられてしまい、不思議です。

 

   それに比べ、国民の80%以上が反対しているのにも拘わらず、オリンピックを強行し、その理由にどんなに耳触りの良い言い訳を並べようと、実は利権や金のためだと国民に見透かされている政治屋の浅ましさといったらないですね。シャイロックのこの台詞を言う相手は、彼らこそが相応しいと思います。

「霊柩車に乗ればいいんだ、金と一緒に棺に入れられてな」