King Henry Ⅴ                       38

ヘンリー五世

イングランド王、ヘンリー四世の長男。

 

We few, we happy few

少数ではあるが、我々幸せな少数は

We band of brothers

兄弟の一団である       

『ヘンリー五世』(4幕3場)

 

『聖クリスピンの祭日の演説(the St Crispin's Day speech)』(参考②参照)と呼ばれるものの一部。父王ヘンリー四世を悩ませていた放蕩息子ハル王子が、今や賢明で勇敢なイングランド国王。イングランド軍兵力はフランス軍の5分の1という圧倒的に不利な状況の中、彼は『アジンコートの戦い』に臨みます。

決戦の直前、弱気になっている兵士達を前に彼は言います。「兵力はわずかであるが、我々は兄弟の一団である。なぜならば今日私と共に血を流す者は私の兄弟となるからだ。いかに卑しい身分の者も今日からは貴族と同列である」と。王の言葉に奮起したイングランド軍は圧勝します。

 

 リーダーは困難に直面した時、ヘンリー五世のように部下や民の不安を和らげ、夢や希望を語るべきです。いたずらに恐怖を煽ったり、「お前たちの気が緩んでいるからこんな事態に陥ったのだ」と失敗の責任を部下や民に押しつけるべきではありません。 

 ましてや次の選挙に当選してオリンピック開会宣言の場に立つためにはこの危機に顔を売ることが有効だからと、数値を誤魔化してでも緊急事態期間を引き延ばし、「見て見て、私はしっかりやっているでしょ」のアピールに腐心すべきではないと思います。

 

参考②

This day is called the feast of Crispian:

今日はクリスピアンの祭日である。

He that outlives this day, and comes safe home,

今日を生き延びて、無事家に帰る者は

Will stand a tip-toe when the day is named,

今日の事が話題となれば、思わずつま先立ちし、

And rouse him at the name of Crispian.

クリスピアンの名を聞く度に血が沸き立つであろう。

He that shall live this day, and see old age,

今日を生きて、老後を迎える者は

Will yearly on the vigil feast his neighbours,

毎年その前夜祭には、隣人たちを宴に招き、

And say 'To-morrow is Saint Crispian:'

「明日は聖クリスピアンの日だ」と言うだろう。

Then will he strip his sleeve and show his scars.

そして袖をまくりあげ、傷跡を見せて、

And say 'These wounds I had on Crispin's day.'

「これらはクリスピンの日に受けた傷だ」と言うだろう。

Old men forget: yet all shall be forgot,

老人はものを忘れるものだ、しかし他全てを忘れても

But he'll remember with advantages

その日に立てた手柄のことは、話を盛ってでも

What feats he did that day: then shall our names.

思い出すであろう。その時我々の名は

Familiar in his mouth as household words

日常の生活用語として身近なものとなり、

Harry the king, Bedford and Exeter,

王ハリー、ベッドフォードやエクセター

Warwick and Talbot, Salisbury and Gloucester,

ウォーリックやトールボット、ソールズベリーやグロスターは

Be in their flowing cups freshly remember'd.

溢れる盃を交わす度に鮮明に思い出されるであろう。

This story shall the good man teach his son;

今日の事を父親は息子へと語り継ぎ、

And Crispin Crispian shall ne'er go by,

今日から世界の終わる日まで、

From this day to the ending of the world,

クリスピン・クリスピアンの日が来れば必ず

But we in it shall be remember'd;

今日の事が語られ、我々は思い出されるであろう。

We few, we happy few, we band of brothers;

少数ではあるが、我々幸せな少数は、兄弟の一団である。

For he to-day that sheds his blood with me

なぜならば今日私と共に血を流す者は

Shall be my brother; be he ne'er so vile,

私の兄弟となるからだ。いくら卑しい身分の者も

This day shall gentle his condition:

今日からは貴族となるのだ。

And gentlemen in England now a-bed

そして今イングランドで床に就いている貴族たちは

Shall think themselves accursed they were not here,

この場に居合わせぬわが身の不幸を呪い、

And hold their manhoods cheap whiles any speaks

男が廃れる思いを噛みしめることになるだろう。

That fought with us upon Saint Crispin's day.

我々と共に戦った者が聖クリスピンの日の手柄話を語る間は。

 

 

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